12F 評議会が来る 3
なぁんでこうなったんでしょうねぇ?
「なに異界の出身だとな? それまた面妖な。おぉ我が鼓動が早鳴るぞ!くぅ心音に体が満たされる感覚は
「チャロンマジ話分かんね!てゆうか髪まじふわふわみエグいんですけど!リンスなに使ってんし?」
「ぬわっ⁉︎ あの装飾品意匠エグたんだぜ⁉︎ ひゅーいい色使ってんねー! チャロチャロのそのドレスの刺繍なんてーの?」
蒸気で動く
城塞都市トプロプリスの宮殿の中。何故こんなところに居るのか誰か説明して欲しい。ブル氏の家に居たら姫君がやって来て気付けば宮殿の中。そうとしか言いようがない。空気よりもノリの軽いギャル氏達を姫君が気に入ってくれたから良いものの、見てるこっちは時限爆弾を眺めてる気分だ。
圧倒的場違い感よ。改造された学ランを纏う
楽しそうに談笑している姫君とギャル達はまだいい。その背後に立つ連日の見習い騎士の演習訓練でボロボロの改造学ランを着る
「ほう、貴殿達は冒険者なのか? そして機械神の眷属のそちが傭兵団の頭脳だそうだなソレガシ。我が騎士と仲良くしてくれて嬉しく思うぞ。我が騎士は戦いの話ばかりで退屈だろう?」
「い、いやいや姫君、そんな事別にありませんぞ?」
急に話し掛けてくんなビビる。不意打ち気味に話し掛けれら思わず声が裏返ってしまったが、不敬に思われていないだろうか。格好がもう敬意に欠けていると思うのだが。
だいたい傭兵団の頭脳ってなに? いつから
「何となく察していると思うがなソレガシ、我は今夜この後最高評議会が控えている。大変退屈な話し合いなの。父上から出ろと言われては断れないしね。そこで、傭兵団の貴殿らを雇うから護衛として出てくれないかしら? 勿論軽い軽食も出るわよ?」
「……はい?」
ちょっと待った。時よ止まれ。今この姫君なんて言った?
「宮殿の軽食⁉︎ 受ける受ける護衛受けちゃうって! 絶対映える写真撮れんから! 受ける一択以外ありえんてぃだし‼︎」
「はいギャル氏ちょっとお口チャック」
「はあ? んでよ?」
「寧ろ即決こそありえないだろ常考」
ギャル氏の隣に立っているバイブス下げて目を細めているずみー氏を見習え。怪し過ぎてもう怪しくないところを探すのが難しい。今日出会ったばかりの
「……姫君の真意が見えませんな」
「必要かしら?」
必要に決まってんだろ。『
眉間に深い
「我は賭け事が好きだ。背丈の割に大きな心の臓が脈打ち身の内を支配する
「依頼してくれんのに報酬なしってどゆこと?」
この姫君性格悪いわ。此方のメリットを狙い撃ちしてきやがる。首を傾げるギャル氏とずみー氏に向かい合う。肩を
「ギャル氏、怪盗と呼ばれるからには予告状を出しているはずでしょう? 何を怪盗が狙うかはもう分かっていますが、問題は日付や日時。おそらくそれも予告状には記されているのでしょうが、新聞などに載っていなかったはずですよな?」
「それが?」
「最高評議会でその話もされるのでしょうよ。つまり、最高評議会に顔を出せれば、怪盗を捕まえる為の条件が完全に一つクリアされますぞ」
「あっ」と口を開けて納得したようなギャル氏から視線を切る。誰も正体を知らない上に、いつ来るかも分からないとなれば打つ手はない。だが、少なくとも犯行時間を絞れれば備える事ができる。それを広く周知させていないのは、内部に怪盗がいると疑っているからなのかは定かでないが。
本気で怪盗を捕まえるのなら、喉から手が出るほど欲しい情報の一つだ。その分護衛依頼の報酬金はなしで何らかの見返りを見越しての事なのだろうが。博打が好きと言うだけあって、
そこまで口にされたのならふっ掛けるべきか? 姫君とはいえ仕事の依頼であるのならば多少の融通を利かせてはくれるはず。ギャル氏とずみー氏に目を流せば、ずみー氏が小さく頷いてくれるので姫君に目を戻す。ギャル氏は即決して受けると言っていたしいいだろ別に。
「……条件が一つ」
「怪盗が盗みに入ると指定した日も護衛に雇うと約束しようソレガシ。他にも多少の融通は利かせるぞ?」
「あっ、はい」
姫君の小さな手のひらの上だわ。こっちの考え見透かされてるわ。日時を知っても怪盗が踏み入るのが宮殿内では手を出せそうもなく、犯行後宮殿を出るタイミングか、犯行前に動くしかなかったが、これで選択肢は広がった。「事後で悪いが後で依頼書を冒険者ギルドに送っておこう」と口にして前に向き直る姫君に、「姫様」と
姫君はまだしも騎士は反対らしい。そりゃそうだ。
「『
「……『八界新聞』に感謝ですかな? 嫌いですけども」
「あらいいじゃない、英雄症候群かただのお節介か? どっちでも構わないけれど、ただ我らが王都の『塔』は壊さないで欲しいものね」
あの糞みたいな記事が役立つ日がこようとは。一月前の事で
「チャロ姫様の御到着です」
扉の先に待ち受けている重々しい眼光達に喉が鳴る。帰りたくなって来た。全員が中へと足を踏み入れると同時に鉄扉は有無を言わせず閉じてしまう。逃げ場はもうない。間を置かずして入場とか姫君最初からそのつもりだったなマジ勘弁。
城塞都市トプロプリスの最高評議会が始まってしまう。始まって早々BANされないように神に祈ろう。あぁ……
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