七、 降魔
――
やはり、その名はとうの昔に察知されていたようだった。
「やはり、
御
秦舞陽も
いかな
邪気の渦は、その声を最後に
黒扇が闇に舞い落ちる。
女神像の全貌が
否、鮮血よりもその巨大な
引き起こされる旋風に乗って
距離をとった今、女神像――否、妖神の全身を視界におさめることができた。
その恐るべき本性を花開かせようというのか、柳のごとくだった肢体は、暴発せんばかりに
新雪のごとくだった
人の腕ほどに巨大な舌は、狂奔する蛇のごとく乱舞し、
もはや神、と呼ぶよりは、生ける混沌の渦。
その中に、無数の情景が踊り狂うのが見えた。
乱世。
闘争。
奸心。
欲望。
憎悪。
獣性。
怨念。
絶望。
それらが世界を
その中から
鬼神が、妖魔が、憎悪を
宇宙の
――そう。まさしく
あの老宦官も、あの混沌の渦の眷属と化しすにあたって五体を切り刻まれたのだ。
それを
(いかな匕首の剣を懐中に隠し持っておられるのかは存じませぬが――)
彼の最後の一言が脳裏をよぎる。
おもわず皮肉な笑みがもれる。
「匕首の剣など懐の中にはなかったのだよ、君。
それは外に――
廟に立ちいる前に一瞥した夜空の様がうかぶ。ふたたび、
―― 十一時二〇分。
なんとか時間内に、あの妖神を廟の外まで誘い出せた。まだ
今頃、この北平の背後を守る
あの修法を完成させる鍵となった智識が、あの宦官が中文に訳した『Necronomicon』――『屍龍教典』だったというのは、なんとも皮肉な巡り合わせであるが。
「それにしても、
せめて二十年近くは
兄ともども、このような怪神どもと渡り合う定めの人生、さほど、期待はしていないが……。
崩れる廟から躍り出て、
西の夜空からは、
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