五、 転生
露見したがゆえ、という訳でもあるまいが、地につける脚をもたぬ体は、
目と耳が腐れ落ちた首と、
「刃を握る
私の首を
それでも
さしもの儈子手も、
皮と筋とのみで胴と
どう言い表せばよいものでございましょうか」
くつくつと笑う首が、長く伸びてゆく。
否、中身の潰れ、かろうじて残った首の皮が、下へと伸びてゆく。
三尺も伸びたあたりか、古革を引きちぎるのによく似た音が響き、胴体は床へと落下する。
崩れた肉と朽ちた骨がつぶれる音が響き、床からは濃密な腐臭と屍臭とが立ちのぼってくる。
「しかれど、
それとも、人の体が死に染まる時は、皆このような感覚を
首の千切れゆく痛み、切り
否、胴より削り落とされた肉片の痛み、いまだ
それどころか腐れ落ちた両腕・両眼・両耳の痛みまでもが。
全身を
徐々に熱気へと変じ、それがさらに酒精のごとき酔いへと転じたかと思えば、裂かれた肉と
骨肉を刻み
この快楽は、かつて幼き日、あの廟の中にて、聖なる鎌で『
先ほど、その話をしたときと同じく、
首から下はすでに無いが、暗闇に浮かぶ首が、まるで柔らかい
「
刻限もまた今と同じく、このような夜中でしたが、破れた戸口からは秋の風が吹きこみ、ひどく冷える夜にございました。
しかし、首の下からは、熱酒でも
その奔流に
その有様を実演するかのように、小さな首は、蠢き揺らぎながら、闇の奥へと漂ってゆく。
どこまでゆくのか。この小さな廃廟、もう奥の奥まで
おかしくないほどに進んできたはずだが。
飛ぶ首を見失うまいとして、灯りを掲げたとき、周囲の闇の異様さに気づく。
小さな
天井はおろか、廟の壁も、壁面を埋めていた鎌の刃も、足元の床すら、虚空のごとき暗黒に呑まれていた。
「その熱気と快楽の奔流はこの、本堂の奥にて渦巻いていたのでございます」
不意に、首はゆるやかにその動きを留め、くるりとこちらに面を向けた。
虚ろな眼窩が、そして口腔が
その
あたかも蛇のそれのように。
細く、長く、尖り、そして毒に
「そこにおわした女神様の
大河に流れる一葉のごとくに、私はただその
より多くを語ろうと務めるように、舌はますます激しく踊る。
幾本も、幾本も。
増えてゆく舌の中には、眼窩から
「女神様は、そのような私に手を伸ばし、嬰児に慈悲をあたえる観音のごとくに、私めを抱擁してくださったのでございます」
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