四、『屍龍教典』
「あれは
内宮の
『
乙酉、さる西暦一八八五年。
四月には朝鮮をめぐって日本との調停を、六月には清仏戦争の講和を、ともに天津にて締結した年だった。
大清の威光が異国の文明に
「幼き頃に父より課せられましたるかの恐るべき日々が
ふがふが、と、歯の抜け切った口が
「『
見慣れぬ西洋の文面から、
かくなる
ただただ
その毒によるものでありましょうか。
筆をふるう半ばより、徐々に黒く腐り始めた腕は、全ての頁を埋めてほどなく、根元より
それはただ、中身がとうの昔に
「落ちた腕では
文面を一字たりと読んではならぬ、と堅く申し伝えた上で。
古伝には、天を揺るがせし人面蛇体の大水神『
かの魔王の名と性とにちなんだ『
廟の壁どこかに風穴でもあるのか、不意に強い風が通り、砂の香りがする。
前の様子をうかがった私は、
暗さゆえに判然としなかったが、宦官の襤衣の
「耳目もなく腕もなく、哀れな姿で病熱と恐怖とに
私めの翻訳いたした『
全身の肉を、一片また一片と、死に至るまで
そのようなおぞましい言葉を口にしながらくすくすと嗤う老宦官の身は、暗い燈火の光の中で
「ところが、
いかに体から肉を
無論のこと、胸口を
ございますが――まるでその疼痛こそが刻まれた肉を燃え上がらせ、染みわたり、新たな精気と化して、身を
総身から
七
周囲の店にて
幽鬼の叫びのごとき音響が戸口より吹きすさぶ。
廟内へと舞いこんだ疾風は、宦官の襤衣の
そして、その膝より下が、
両の
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