第34話…悪役令嬢はごはんが食べたい
「……は?」
いや、ごはんて三食……はまだこの時代食べてないか。二食は食べてるよね。まさかダイエットしててごはんが食べれない……なんてことはないか。
とか考えてる私に気付かず、ブランシュ嬢は両手を組んで夢見る様な表情で語りだした。
「真っ白なごはん……焼き鮭、納豆、明太子にお味噌汁、だし巻き卵……ああTKGもいいわね……」
ああ、なんだ。ごはんて白米のことか。食事全般の事かと思ったよ。うっとりしながら日本食を語るブランシュ嬢を、ちょっと冷めた目で見ながら紅茶を啜る。あ、もちろん音たてて飲んだりはしてないよ!
私はお風呂で肩まで浸かりたい!という欲求はあるんだけどね。何故か日本食に対する欲求はあんまりない。南米原産的野菜も、トマトはミネストローネ、トウモロコシはポタージュ、ジャガイモはヴィシソワーズにしたかったし。……よく考えたら全部スープだな。我ながら何故だ。
ていうか、ラノベの定番だな。日本人がなんちゃって中世ヨーロッパに転生すると、何故かみんな米味噌醤油を欲しがるって。私はパンとスープで全然平気だから、考えたことなかったよ。
「あ、あの……どうかした?」
一人自分だけで盛り上がってるのに気付いたらしい。ブランシュ嬢はたぶん『わかる!私もよ!』とか言ってくれると思ってたんだろう。不安そうな顔してる。
「えーと、結局私にお願いというのは……?」
「え? だからごはんが食べたいの。作れないかしら?」
うーん。作れるか作れないかといわれれば、ねぇ。
「ブランシュ嬢には残念なお知らせです。きっぱりはっきり無理です」
「えええっ!?な、なんで!?どうして!?」
そもそも同じ転生者だとしても何で私がご飯を用意出来ると思ったのやら。
「だ、だってランクス殿下が、貴女はすごく美味しいお野菜を作れるから農園にスカウトされたって言ってたから、きっと元日本人だしお米とかも作れるでしょ!?」
ああ、殿下から中途半端に聞いたのか。まあ、日本人なら誰でも米が大好きで、白米が食べたいと思ってる時点で無理なんだよなあ。
「まず第一に、私には確かに農業系チートがありますが、あくまでこれは『植物を上手に育てられる』、であって無いものを作り出すのは出来ません」
実はこの国にも米はある。というか実家でも作ってた。量は少ないし陸稲栽培だけど。ただ、いわゆるインディカ米ぽい、粘りの無い品種なんで、白飯として食べるのは無理なんだよね。
もしかしたらジャポニカ米的品種あるのかもしれないけど、やっぱり日本人が好きなあのお米の味は、日本の風土と品種改良によるものじゃないかと思うし。
私のチートで品種改良は出来るけど、あくまで品種改良だから世代重ねてかないといけないいんで、何年かかるかわかんないもんなあ。
「そ、そんな……」
「それと二つ目として、私味噌も醤油も作り方しりません」
それは農業チートじゃなくて料理チートっしょ。
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