第31話…月明かりの下で②
改めてもう一度、ライトの魔法を使う。手のひらの上にソフトボールよりちょっと大きい光の玉が現れる。この世界にソフトボールないけど。
「まあ、こんなもんですかね。これ以上大きくすると光量が落ちますし、長時間は無理です。蝋燭の火くらいならもっと保ちますけど」
ふむふむ、と頷きながらランクス殿下は、大きくなったり小さくなったりしてる私の光魔法を注視している。
「昨日も思ったけど綺麗な魔法だね。魔導士の中でも中々いないよ」
「きれい?」
え?魔法に綺麗とか汚いとかあんの?
「なんていうのかな……魔力の精度が違う気がするね。魔導士には確かに魔力が大きく、強大な魔法が使える者が居るが、その実魔力操作は結構いい加減なんだ。もしかしたら魔法を習得した頃は出来たかもしれない指先に炎を灯す魔法も、魔力があがって強大な魔法を覚えていくうちに絞ることが段々苦手になって出来なくなるようなんだ」
「ああ、まあ私は魔力増えなくて、初級しか使えないんで」
そもそもよくよく考えれば、生活に密着した初級レベルの魔法が使えれば十分なのだ。畑に水撒いたり、暖炉に火を付けたり、落ち葉集めたり、害獣用の落とし穴掘ったり……
「一応確認は出来たよ。ありがとう。本当なら一番肝心な聖魔法も確認したかったんだけどね。昨日君に止められたからね」
「当たり前です。怪我人をわざわざ作らないで下さい」
「君がカシェの使い魔を治療している所は見そびれたからねえ」
「…そういえば、殿下には使い魔はいらっしゃらないのですか?」
この人も塔の魔導士だから使い魔はいそうだけど。まあ順当にいけば鳥か猫よねえ。でも、変人だから蜥蜴とかハムスターとかだったりして。
「心の声が漏れてるよ。近いのはあるけど違うね。流石に僕もトカゲは嫌だなあ」
お、秘密なのかな?まあ旅に出たら会えるでしょう。自分で言っといてなんだけど私も蜥蜴はヤだし。
「で、結局いつ出発なんですか?畑もどうするか決めてないですけど」
王様の許可あるのかどうかすら知らないんだけど。私が来る前みたいに全体の畑から良さげなのを選ぶのかな?…いや、別に王様に謁見なんて望んでないからね!フリじゃないよ!!
「勿論宰相経由で陛下に話は行っているよ。陛下も驚いていたけどね。まさか農婦として雇った女性が聖魔法の使い手だなんてね。君が暫く離れるのはとても残念だけど、国としては問題ないよ仕方ないしね」
畑は予想通り以前のやり方になるようだ。ちなみに私がチクった料理長の料理は、ホントはあんまり王族の皆さまの口には合ってなかった様で、どうやらクビになるらしい。
……いや、逆恨みで刺されないようにね、って笑顔で言われても困るんですケド……
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