第30話…月明かりの下で①

 月が煌々と照らす夜。って、明るすぎるわーーー!!


 待ち合わせの時間まで猫ちゃんと遊ばせてもらい、ご機嫌だったのも束の間。約束通りランクス殿下にディナーをご馳走になったのはいいが、食べてみた結果やっぱり火を通しすぎだったり味付け濃すぎたりして素材の良さを殺しまくってたので、得意気だった料理長の前でおもいきりディスってやったぜ!怒りに顔を染める料理長を見て、料理を運んでくる部下の料理人やメイドさんがこっそりぐっじょぶしてくれた。明日から、納品行くと意地悪されそうな気もするけど、こちとらバックに王子が付いてるんだぜ!虎の威を借る狐だもん!


 てな訳でお腹膨れて若干眠くなった為、テンション駄々下がり中の私です。面倒臭い……早く帰りたいよお。こっちに生まれてからの農民生活で、明るくなったら起きて暗くなったら眠る体内時計内蔵になったのだ。


「僕も人のこと言えないけど自由だね。僕をそこまでぞんざいに扱う人も珍しいよ」


 そういう殿下は楽しそうだ。楽しそうなのが魔法を見れる事に対してなのか、私の言動に対してなのかはちょっと気になるが、深く追及すると墓穴掘りそうなのでスルーしよう。そうしよう。


「まあひとまず光魔法を見せて貰おうかな。簡単にライトでいいから」


 光属性の魔法は基本光る。なんのこっちゃと自分でも思うが、光を出すことしか出来ない。まあ、夜に使うと自前で明るく出来るし、魔獣や獣に対して目眩ましは出来る。だが、『ライト』と『フラッシュ』、それだけだと言われている。正直光魔法は、魔法を使える人の中ではかなり珍しいが、有用性からいくと地水火風の方が役に立つので、わりとハズレ扱いされている様だ。


 私としても電照菊栽培とかしてるわけじやないので、光魔法は農業的にはなんの役にも立ってない。もしかしたら原理を知ってたらレーザービーム出して害獣退治とか出来たかもしれないけど、なんでこんなことが出来るんだ!?ってなった時面倒臭いしね。だったら水魔法を極限まで絞って、ウォーターカッターにした方が早い。


 取り敢えず言われた通り、手のひらを上に向け小さく明かりを灯す。


 ……全然目立たん……


 なんと今日は満月で、ひろーい練習場のど真ん中は月明かりで私のささやかなライトの魔法などなんか手の上にぼんやりと明かりが灯ってるかなー?くらいにしか見えない。


 正直、外に移動と聞いた時点であれ?光魔法は光るだけなんだから室内でもいいんじゃね?と思ったけど、面白いから放っておいた。予想通り。ただ、外が暗いから眠くなるは移動が面倒臭いはで、しまったと思ったけど。


 私の手を見た殿下は、やっとそこで自分の失態に気付いたらしい。


「あー。そうか、満月か。ごめん、ちょっと移動しよう」


 練習場の客席の北側に移動する。わりと月が高く上ってるから少ししか影が無いけど、ど真ん中よりはマシね。これだけ広い練習場の隅っこっていうのもちょっと間抜けだけど。

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