第24話…キラキラ君はお兄さん

 ……な、なんか、どっと疲れた。もうヤだこの魔法バカとバカ真面目。なんとか必死になって止めたんで、渋々引き下がってくれたけど、治るからって自傷行為はやめて欲しい。


 え、なんか怖いこと思い出した。この二人が一緒に旅に行くのよね?いやぁぁっ。トラブル起きる予感しかしないっ!!


 聖魔法が駄目なら、まだ光魔法が見てないから夜まで居ると駄々を捏ねる殿下に、寮の門限あるから嫌だ!これ以上我儘を言うなら宰相様にかけあうぞ!と脅したら諦めてくれたけど。ていうか、なんで私王子様を脅してんのよ……


 今日は疲れたのでこっそり帰って部屋でタライ風呂しよう……そう考えながら練習場からいつもの通用門へと向かっている途中、ピタリと私の足が止まった。


 ……あかん、迷った。


 王宮の敷地は立て替えと建て増しで迷路みたいに入り組んでいる。来るときはメイドさんが案内してくれたけど、魔法バカから逃げるように来てしまった今、自分が何処に居るのか、皆目検討がつかない。


 誰か道案内してくれそうな人居ないかしらん、とキョロキョロ周りを見渡していると、庭っぽい、ちゃんと手入れされている場所の隅っこで、何かでかくて黒い塊が動いた気がした。


「な、なに……?」


みー。


「……みー?」


 なんか弱々しい猫みたいな鳴き声がした。好奇心は猫を殺す、なんて言うけど、猫の鳴き声が聞こえたら見に行かないではいられまい!猫好きなので!!


 前世実家で飼ってた猫は、私にあった加護の事をよく知っていたのか、冬はいつも私のところにやって来て寝ていた。多分暖かかったんだろうね。その分夏は触ろうとするだけで猛烈に怒られたけど。


 ふらふらと誘われる様に鳴き声の方に近付くと、黒い塊と思われたものが、人の着ているローブなのに気付いた。ローブ着てるってーと、魔導士?


「どうかしました?」


 そーっと声をかけたつもりだったけど、 びくん、とローブが跳ね上がる。驚かせちゃったかな。ごめんね。


 だが、私の声に振り向いたその人物の顔を見て、私は声をかけたことを猛烈に後悔した。


 ……oh……パケ絵キャラ第二弾……


 ゲームのパケ絵の中で多分一番小さく描かれた攻略対象の顔が一瞬で思い浮かぶ。ランクス殿下の場合は『似ている』だったけど、今ここに居る彼の場合は顔立ちが『そっくり』という表現がぴったりだ。攻略対象の、えーと、ネクラ君?のお兄さんの方だよね多分。


 ゲームのネクラ君は黒目黒髪で如何にも根暗!って感じだったけど、目の前の彼は金髪で琥珀色の目をしている。双子なのに色目がが正反対なのは、確か属性が身体的特徴として現れてたから、だった筈。色が違うだけで、顔が同じでもここまで印象変わるんだね。この人は、ネクラじゃなくてキラキラ儚い系美少年に見えるよ。

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