アダム

 それにしても学校というものは退屈だ。なんでこんなものがあるのだろう? 代り映えのしない授業、どいつもこいつも同じような雁首を揃えた(白亜以外の)級友たち、焼きそばパンがいつも売り切れている昼休みの購買。白亜がいなければ、そう、もしも僕に白亜という存在がいなかったら、僕はこんな世界は壊してしまいたいとそう願ったかもしれない。


 だが実際には僕はそんなことを願わない。焼きそばパンも要らない。昼休みのチャイムがなるや否や、僕らは早々に体育館の倉庫室に忍び込んだ。教師の眼を盗んでことに及ぶくらいはお茶の子さいさいである。何しろ慣れている。


「たっつきー♪ だいすき、だいすき、たつきー」


 色気のあまりない仕草ですぽぽんと着ていたものをそのへんに散らかし、白亜は僕の首にむしゃぶりついてきた。


「ちょっと、待てって、下にマットしかなきゃ」


 マットというのは運動用のマットのことだぞ、誤解のないようにな。まあこれからぼくたちがする運動はやっぱり結局そういう運動であることに変わりはないが。


「ねー、今日はわたしが上でいい?」


 積極的だった。わざわざだめだなどと言ってしょんぼりさせるのもかわいそうなので、言う通りにさせてやる。


 ところが。


「あっ」


 どういう意味の「あっ」かというと。


 白亜の首がもげたのである。ぽろりと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る