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 一週間前――



 一ノ瀬家。

 二年前に妻が亡くなってから男手一つで育ててきた息子の才人と二人きりの食卓。

 自分の料理の腕がいまいちなのは承知しているが、それにしても箸が進まない息子に違和感を感じて話しかけた。


「どうした才人? 何か悩みでもあるのか?」


「ううん……何でもないよ」


 そうは言うものの、明らかに声に生気がない。

 俺は適当な話題をと思って、


「そう言えば、昨日誕生日に買ってやったVRゲームはどうだったんだ? 柊さんとこの烈火れっかちゃんと、岩藤さんとこの美々みみちゃんと三人でやるんだってはりきってたよな?」

 

「父さん……ごめん」


「ん? なんだ、壊したのか? それなら保証が効くだろうから――」


「そうじゃないんだ。僕守れなかったんだ……二人を。父さんと約束したのに……」


 才人は運動は得意な方じゃない。

 ただ正義感と責任感だけは人一倍強い。

 それが十分わかっていたから、


「時には負ける事もある。それが勝負の世界だ。悔しいかもしれないがそれをバネにこれから強くなっていけば――」


「違うんだ! 二人があんな酷い目にあったのに僕は……」


 才人は突然声を荒げ、顔を上げた。

 

 俺は今まで息子のこんな表情を見たことがなくて言葉を失った。

 怒り、後悔、そして――恐怖。

 痛くても悔しくても決して涙を溢さなかったあの自慢の息子が顔をぐしゃぐしゃにして泣いていたのだ。


「才人……父さんに全部話せ。辛いかもしれないが、お前ならできるよな?」


 それから才人は落ち着きを取り戻し、昨日ログインした後の事を詳細に話し始めた。



 才人、烈火、美々は例の三人組と遭遇。

 手取り足取り戦い方を教えてくれると言うので、PVP対戦を受理。

 しかし彼らは実装されたばかりのPVPシステムの穴をついた初心者狩りだった。

 才人達は威嚇射撃で追い詰められ、一か所に誘導され拘束。

 ゲームなので当然、殴られても痛みというものは感じない。

 しかし精神的苦痛ははかり知れないものだった。

 

 美々は急所に当たれば即死判定のナイフを首に当てられた。

 烈火はダメージが無い事を良い事に銃器で顔を殴られた。


 才人はそれを何もできずに見ているしかなかった。

 無力な自分を呪いながら、理不尽さに憤りを感じながら。


 さらにタチが悪いのは各々が二度死亡するか30分が経過するまで戦闘が終わらないシステム。つまり、ただ死ぬよりも辛くむごい体験を二度もさせられたのだ。



 ――許さない! 子供たちをこんな目に合わせたやつらを絶対に!



 そして鎧と柊を招集し、Avengers復讐者を結成したのだった。

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