第13話 アーサーは女じゃなくて立派な男

アーサーは俺達を家に連れて行く途中で、妹を迎えに行くと言って近くの小屋へ寄った。


「リリアナ、もう大丈夫だ!俺達のこと助けてよくれるって言ってくれてる奴らがいるんだ!」


そう言いながら二人は出てきた。

俺はまたドキッとしてしまった。

リリアナと呼ばれた少女は可憐で、結構女っぽいアーサーに負けずというかより一層可愛い。

おまけに乳房が…………デカイのだ

何を食ったらそんなデカくなるんだか…

すごいなほんと…


「俺の妹のリリアナだ。可愛いだろ?」


アーサーが俺達に紹介する。

するとリリアナは俺を見るなり固まった。


「おおお兄ちゃん!この紫の目の人はやめたほうがいいよ!というか逃してあげて!」


「なんでだよ、別に取って食われりゃしねぇだろうし。それにこいつら強いらしいから。」


途端にリリアナが顔を真っ赤にして俺の手を握る。

あっ…胸が少し当たってる…


「今すぐここから逃げてください!じゃないと…お父さんにその…あんなことやこんなことをされてしまいます!」


あんなことやこんなこと?

うーんその言葉は俺が知っている方だとエロい意味につながるんだよな…まさか…


「まぁまぁとりあえず、行ってみよう。やばいって判断したら逃げるかベリルに助けもとめるしさ!」


リリアナは少し不安そうな顔をしながらも俺達と家へと急いだ。


「助けるって具体的に何をしてほしいんだ?」


ずっと気になっていたことをたずねる。

アーサーはうつむきしばらく黙っていたが、やっと話してくれた。


「あいつ、3年前にイラついたからって母さんを殺したんだ…だから…あいつを殺してほしい。」


なるほどな…

憎いだろうな、辛かっただろうな…

俺には母親の記憶がない。

俺が生まれてすぐに病気になり、リュークを生んですぐに死んでしまったからだ。


「分かった…後悔はないんだろうな?死んでしまった後じゃもう助からないぞ?」


アーサーは黙ったままこくりとうなずいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


家の前に着くと、離れた場所からでも強い酒の匂いがした。

鼻がバカになりそうだ。


鼻をつまみながら扉を破壊し、中に入る。


すると、すでに死んでいるアーサー達の父親とひょろひょろの体の男がいた。


「リリアナたん!!」


男はリリアナを見て目を輝かせる。


「お前、まだリリアナを諦めてなかったのか!!」


アーサーはリリアナをかばうように立つ。


「うるせぇな!お前に関係ない!早くリリアナたんを俺のところへよこせ!」


男が怒鳴りアーサーに飛びかかる。

俺もベリルも止めるために一歩踏み出そうとするが、アーサーが男の肋骨めがけて拳をぶつけた。


バキボキッ!

嫌な音をたてて男が崩れる。

確実に肋骨が何本か折れたな…痛そう…


アーサーが男を見下ろし叫ぶ。


「俺の妹に二度と近づくな!」


俺達は家を後にした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「これからお前たちどうすんの?二人で生きていくのは大変だろうしさ、よかったらだけど俺達の旅についてこないか?」


俺は二人にそう提案する。


アーサーはでも…と遠慮気味だったがリリアナは、


「ぜひお供させてください!!お願いします!」


と元気よく返事をした。


アーサーはため息をつき言った。


「二人がいいなら俺たちも同行させてくれ、だからってリリアナに変な気起こしてみろ!ぶち殺すからな!」


俺ははいはいと言いながらアーサーをなだめ、二人の出発の準備をした。



出発の日、アーサーは軽めで丈夫なソードマンの装備を、リリアナは大きい魔女帽子とひらひらマントに魔水晶のついたマジシャンの装備を整えた。


そして、俺達はベリルのひく馬車に乗り込み、旅を続けるために【ルグミスト】の街をあとにした。

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