第10話 力はいずれ暴走する

どうしよう…ベリル、お願いだ…

何も言わずに立ち去ってくれ。

じゃないと俺…恥ずか死ぬ…////


「リ…リューク!クレオが好きだからって…そ…そういうことをするのは、よくないぞ!///」


するとリュークは、素直に俺の中から指を引き抜き、ベリルを睨みつけながら部屋を出ていった。


極度の緊張と疲労で俺はその場で気絶した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


目が覚めると、業務室の机に今までの比じゃない量の書類やらが置かれていた。

ベリルはそれを頭から湯気を出し、目を回しながら確認しまくっていた。


なんでも、国中に魔獣や魔物が大量発生していて、ギルドの冒険者達では倒せないほど強い魔獣も大量に発見されているらしい。


でも、どうしていきなり…


書類を手当たり次第に確認していると、使用人の一人が部屋に飛び込んできた。


「陛下!この城の付近にビッグ・ドラゴンが出現したようです!」


「なっ!なんだって?!」


ビッグ・ドラゴン…

一瞬で国を全て焼け野原に変えたと言う、この世界【プラチナル・ソードワールド】で最強最悪の超大型魔獣だ。


だが、人間界には滅多に降りて来ず、逆に降りてくるほうが最悪の意味で奇跡と言えるようなやつだ。

なぜこの国に…特別発展しているわけでもないのに…


すると、リュークが部屋に入ってきた。


「国王陛下、ぜひ我らがアルバルト国騎士団に出動命令を!」


リュークが膝をつき、頭を深々と下げる。

だがリュークも連日、魔獣退治の依頼で走り回っている。無理はさせたくない。

でも、これには国の存命がかかっているんだ…そんな私情で国民を危険に晒し続けることはできない…


「分かった…そのかわり、俺とベリルも戦場に立つ!」


リュークは目を見開き、


「それはだめだ!あなたはこの国の王であると同時に俺の兄様だ!そんなことさせられない!」


「そんな悠長なことは言ってられないんだ!!この戦いで国は滅ぶかもしれないんだぞ!!そうなるくらいなら、国民のために血を流すのなんて当たり前だ!それが王としての責務だ!」


俺は声を荒げ、リュークにキツく言った。

ベリルがそっと俺の肩に手を置きリュークに言う。


「自分はまだこの国に受け入れてはもらえていない。もちろん自分の仲間たちもだ…この戦いでこの国を守り抜く事ができれば自分達を受け入れてもらえるかもしれない1つのチャンスなんだ…自分達にも戦わせてくれ!」


リュークは、すごく辛そうな顔のまま、俺達が戦場に立つことを了承した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そして数時間後、

準備が整い、ゆっくりと飛行するビッグ・ドラゴンを討伐すべく突撃した。


リュークとベリルは先頭の班で先に攻撃を始める。

俺は魔術軍と共に、火炎魔法と雷魔法などの攻撃に特化した魔法でビッグ・ドラゴンの体力や持久力を削る。


「リューク!右だ!」


ベリルはよくきく鼻を使い、リュークや騎士団のみんなに次の攻撃が来る場所を予測し、伝える。

魔術軍との連携もあり、戦いを始めて7時間ほどたった今でも動ける者のほうが多く、なんとかダメージを与えられていた。


もうすぐビッグ・ドラゴンを仕留められそうなその時、リュークの動きが止まった。


「リューク?リューク!」


ベリルが声をかけても反応しない。

俺は、すぐに攻撃を一時中断し、リュークのもとへむかった。


今リュークに戦線から抜けられては、仕留められないからだ。


「リューク!聞こえるか!」


すると、リュークがいきなり叫び声をあげた。


『ゔぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーー!!』


叫んだと同時にリュークのピンク色の髪が血のような赤色にかわり、口からは牙が生えだした。


「もしかして…これって…」


この姿、ゲームの…魔王のリュークと同じだ…そんな…


俺は無我夢中になり、リュークに抱きつく。


抱きついた途端、黒い魔力が俺とリュークを包み込んだ。


「クレオ!!リューク!!」


ベリルの叫ぶ声がする。

なんだこれ、どうなっているんだ?


すると、黒い魔力の塊があちこちに出現するのが微かに見えた。


そして真っ直ぐビッグ・ドラゴンへとむかって行く。


あんなに手こずっていたビッグ・ドラゴンが一瞬で黒焦げになり倒れた。


リュークなのか?今のは…どうしよう、リュークが完全に魔王になる前に元に戻さないと…俺も死ぬし…リュークも勇者に殺されてしまう!

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