深海シンドローム彼女

みなみくん

第1話 深海シンドローム彼女


いつからだったろうか


煩わしい毎日に辟易して


息が上手く出来なくて


上手に生きれなくなったのは




いつからだったろうか


不安や虚無感が入り交じって、ぐちゃぐちゃになって


眠れなくなったのは




いつからだったろうか


それがいつの間にかよく分からなくなってきたのは



深い深い海深くに沈むように


どこまでも、ひたすらに暗く何も聞こえない、重力もないような感覚


そんな感覚に安心と依存を覚える


真夜中の微睡みと現の狭間が其れに似て


暗い部屋、ベッドの中


あたしは深海にたゆたう


真っ暗闇にどこまでも沈んでゆく



幼なじみはこんなあたしに何かと言うけれど


別段あたしがおかしいわけじゃないと思う



ネットなんかで、見えない世界に向けて繋がりを求めて紛らわせる毎夜を送る人間だって沢山いる


皆が皆、何も恐れてないわけじゃない


皆が皆、同じようにそれと向き合ってるわけじゃない


こんな煩わしい毎日を送る今の世の中


普通なんて曖昧だし、変なことじゃないと思う


人それぞれなんだから



どちらがどちらを否定する権利も意味もないと思う


喩え、端的に言って


陽の当たるような明るい場所で過ごすか


そうじゃない静かで暗い場所で過ごすか


1人でいる方が心地よいか


誰かと居たいとか


何かを求めるか


何も求めないか


そんな感じの、スタンスとかの違いじゃない?


言い換えたり付け加えるなら


立ち位置とか


在り方とか


価値観とか


そういうの


0の人もいれば100の人もいる


そこがいい人も居れば真逆の場所を望む人も居る


在り方は人それぞれ


それでいいじゃない




やめれない煙草の吸殻が溜まった灰皿


たいして眠れない眠剤の空のシートが広がるテーブル


この広い現実世界に、あたしだけの深海がここにある



無駄に射し込む陽は要らない


何度も光るiPhoneを真っ暗にさせて


あたしは今日も深海へとゆく


もっと深くもっともっと深く


手放した意識に沈んで、溶けていくような感覚


その日は、いつもよりも


もっと深く沈みたかった






泣き叫ぶような声がして


あたしは目を覚ました


幼なじみが涙をうかべている


あたしは支えられている


定まらない焦点と回らない思考で


ちゃんと理解は出来ないけれど


彼の顔は泣きながら安堵するように感じ取れた



「良かった、、もし目覚めなかったら、、連絡もつかないし、、凄い量の薬の空があったから、、」



彼の涙が落ちて


あたしに其れが触れて伝った


暖かい、そう感じた


震える幼なじみに抱きしめられて


ぼんやりと感じた事があった


それは不思議な感覚だった


あたしは、今


深い海の底から引き上げられたようだった







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