第2話 ケンカと仲直り

 高校に入学してようやく友人が出来初め落ち着いてきた時の話である。


 家から学校までは自転車で10分の距離で毎日自転車で通学をしている。


 もちろん…太陽も一緒だ!!!自分で言って照れるけど嬉しい💕嬉しいものは嬉しいのだ。


 これは昔から一緒で幼稚園の時は同じバスで小・中学の時は一緒に歩いて通学をしていた。


 中学3年の後半は1人で通った…。


 それは、中学3年の後半に俺が太陽を傷つけたからだった。





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 中学の3年の夏休みが終わり…あっという間に季節は秋から冬へと代わり、それぞれ進学に向けて準備を始めた。


 太陽は進学に生徒会の引き継ぎと本当に大変そうで俺が心配になるほど忙しそうだった。


 俺は帰宅部で本を読むのが好きだったから、太陽の生徒会が終るまで図書室で毎回暇潰しをして待っていた。


 図書室の入り口は入りやすいように開けてありよく音が入ってくる。


 時には吹奏楽部の綺麗な音が聞こえたり、運動部の掛け声が聞こえたりとあきないと俺は思った。


 まぁ、読書してる時に気になる人もいるみたいだが俺は青春してるんだなぁと思っている。


 今日は何が聞こえるのかと思うと少しワクワクしないか??…人の話を盗み聞きとは悪趣味とか思う人もいるけど聞いていると面白い話が聞けたりするから楽しみなのである。


 すると廊下から…女子生徒3人組の声が聞こえてきた。


『最近の生徒会長忙しそうよね~』


『まぁ卒業がちかいから色々大変そうよね!受験勉強もあるしね~』


『最近は疲れた顔しているよね…でも疲れた顔もイケメンよね!なんかハァーってため息ついてる姿なんてなんか色っぽいよね!!』


 女子生徒3人組は太陽の話をしていた…そうだろう!そうだろう!!太陽はすごいやつなんだ。


 燐は太陽の話が聞けて嬉しかった!最近の太陽は忙しそうで昔より関わる時間が減っていた。


 朝と帰りに話をするだけで、小学生に時みたいに家を行ったりきたりする時間は減っている。


 本当はもっと太陽と話したいし一緒にいたい!!けど自分から誘うのは恥ずかしくて誘えずにいた。


 太陽の事を考えたり、話を聞くだけでこんなに嬉しい気持ちになるのだと思った。


 そのあとの話が耳に入るまではよかった。


『でもさぁ~やっぱりあれだよね…』


『だよね~』


『あれって告白の事よね?卒業する前に思いを伝えようと生徒会長さぁ毎日いろんな人から告白されてるよね~』


『私も告白してみようかな~♪』


『断られるだけよ!!だって告白した友達に聞いたけど好きな人がいるからって断られたらしいよ!!しかも、黒髪でめちゃ可愛いらしいよ』


 そんな、天国から一気に地獄に落とされたようにショックでそのあとは気づいたら家に帰ってベッドで声を殺して泣いていた。


 そんなことあるのかよ!!やっと好きだとわかってこれからアプローチしようと思ってたのに…もう手遅れなんて!


 中1で太陽に対しての気持ちに気づいてようやくこれが恋心なんだと気づいた。


 なのに、告白する前に燐の恋は終わってしまった。


 ただでさえ中1の時、雑誌を見ながらこの子がタイプだと言ってて男の俺なんかが告白しても無理だと諦めてたけど改めてリアルを突き付けられると涙があふれて止まらなかった。


 あれからどれくらいの時間がたったのだろう…気づくと俺はベッドの上で寝ていた。


 コンコンとドアを叩く音が聞こえた。


『燐ちゃん~!ご飯よ』


 ガチャと音をたててお母さんが部屋に入ってきた。


『わかったよ!今行くよ!!』


 燐はだるい体を起き上がらせて返事をした。


『まだ着替えてなかったのね!シャワー浴びてきなさいよ~』


 お母さんは俺に声をかけると部屋から出て言った。


 シャワーを浴びてスッキリすると少し体が軽くなったと思う…風呂の際に鏡を見ると目が赤くなっていて水で冷やしたタオルをのせて冷やした。


 リビングに行くとお母さんが洗い物をしていた。


『今日はお風呂長かったわね~』


 お母さんはそう言いながらコップ1杯の牛乳をくれた。


『お母さん…ありがとう』


『温かいうちに早くご飯食べちゃいなさい~』


 燐はいつもの位置に座りご飯を食べ始める…今日のご飯は俺の好物の秋刀魚だった。


『そういえば燐ちゃん~!今日はね19時に太陽くんがうちに来たわよ』


『えっ???』


 俺は驚いてむせそうになった。


『燐ちゃんの部屋ノックしたけど返事がなくて寝てると思ったから太陽くんにそれを伝えたらね!よかった~と言って帰っていったけどね』


『そうなんだ…』


 燐はぽつりと呟いた。


『ケンカしたなら明日しっかり謝りなさいよ』


 お母さんは呆れたように言っていた。


『うん…そうだね』


 燐は嬉しかった…まさか太陽がうちに来てくれるなんて!たぶん太陽からしたら急に俺が帰ったから心配しただけだと思うけどそれでも自分の事を気にしてくて嬉しかった。


 俺は思った!明日あったら先に帰ったこと謝ろうと心に誓って布団に入るのだった。





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 翌朝、スマホのアラームが鳴る前に起きてしまった!時刻は午前5時半いつもより1時間早い早起きだった。


 とりあえず着替えてリビングに降りた。


『燐ちゃんおはよー!今日は早起きね』


『燐おはよー』


 今日は珍しく父もいた!父は作家で締め切りがあると部屋から出てこないことがよく?ほとんどである。


『お母さん、お父さんおはよー!』


 朝の挨拶をしたら席に座り朝ごはんを食べる。


 うちの家は朝はパンと決まっていて、今日はマーマレードがあったからそれをつけて食べた。


 食べ終るといつもより早い時間だが太陽の家に向かった。


『それじゃあいってきます』


 お母さん、お父さんに声をかけて玄関を開けるとそこには太陽がいた。


 なんで?なんでいるの??まだ早い時間だよ???朝から謝ろうと思っていたが急な太陽の登場で燐はパニックになってしまった。


 しーーーんとした空気をかえたのは太陽だった!太陽もびっくりした様子だったが、いつもの優しい笑顔で頭をよしよししてくれた。


『燐!おはよー!!』


『太陽…おはよー』

 燐は何とかおはよーと返せた。


『昨日は急に帰ったからびっくりしたよ!!!今度からは誰かに伝言を頼むとか何も伝えずに帰らない事!小さい頃みたいに誘拐されそうになったかと思って本当に心配したからね!』


 太陽は本当に心配したんだぞと悲しそうな顔をして怒った。


『ごめんなさい…』


 燐は謝った。


『もう怒ってないよ…目が赤いね昨日は泣いていたの?』


 燐は驚いた!目をしっかり冷やしたからわからないだろうと思っていたのに太陽はそんな小さな変化にも気づいた。


『燐はわかりやすいからね…とりあえず燐が反省したならいいよ』


 太陽はさぁこの話はもう終わりだと普通の話に切り替えていつもの日常に戻った。





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 教室につくとクラスメイトに挨拶をした。


『皆おはよー』


 クラスメイト達はいつも通り挨拶を返してくれた??なんか視線を感じるような気がする?いつもしゃべる友人に問いただしてみた。


『おい…なんで朝から皆の雰囲気がおかしいんだ?』


 燐は小声で友人に聞いてみた。


『まぁ、あれだな~』


 友人は言いにくそうに顔をポリポリとした。


『あれとは?』


 燐には意味がわからず問いただす。


『昨日さ燐が急に帰ったから大騒ぎしたんだよ…特に太陽がさいつもとは違う雰囲気でさ通る人がいたら燐は知らないかと聞きまくってさ!たまたま燐が帰った姿を見たという生徒がいてさ何とかなったけど…』


 燐は驚いた…いつもは余裕ありそうな太陽なのにそんな事があるのかと思った。


 燐と友人の会話を聞いていた男子が冷やかしに来た。


『なんだよwwおめら付き合ってるのか?』


 普段から太陽がモテルのを恨んでるクラスメイトだ!なんでも元カノが太陽を好きになってふられたとか?完全に逆恨みじゃないか!!!


『付き合ってるわけないだろ!俺も太陽も男だぞ!!』


 太陽に悪い印象はもたせたらいけないと本当は好きだし付き合って欲しいけど俺は嘘をついた…これで太陽の面子は守れるとほっとした。


『そんなに全力で否定したら、ますます怪しいじゃないかww本当は好きなんだろ?太陽の事がさ?』


 ニヤニヤしながら燐に聞いてきた。


『俺は太陽なんて好きじゃない!!!ただ幼馴染みだから仕方なく関わってるだけで別に嫌いだ』


 燐は大きな声で言ってしまった…まさかこれが取り返しも出来ないことになるとは思ってもなかった。


『そっか……今まで無理に関わらせていてごめん!もう関わらないようにするよ』


 はっと気づくとそこにはさびしそうな顔をした太陽がいた…俺のプライドのせいで太陽を傷つけてしまった。


『えっと!太陽…あのさ!!』


 太陽がどこかに行ってしまう…自分から離れて言ってしまうと声をかけたが太陽は教室を出ていってしまった。


 教室にはハハハと声が響く…この声は今回の元凶であるクラスメイトだった。


『よかったじゃないかw嫌いなやつと関わらなくてすむな!』


 教室には彼の声が響いていた…。





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 あの日から太陽と一緒に通学をすることは無くなった…隣にいるはずの太陽はいなくなり心にぽっかりと穴が空いた状態だった。


 いつも一緒だった太陽がいなくなり、季節は秋から冬にかわり寒い風は俺のぽっかりと空いた穴を通るように俺の心と体を冷やしていった。


『さびしいな…太陽と前みたいな関係に戻りたいよ…これは告白して恋人になりたいと願った俺への罰かな?』


 燐の呟きは冬の訪れを教えるように降ってきた雪の音によって消されていった。


 生徒会長の太陽とただの帰宅部の燐それが今の俺たちの関係だ。


 戻れるなら戻りたいとあれからなんども願った。


 そんな夢なんてサンタクロースは叶えるはずもなく受験が終わり、正月が来て、あっという間に卒業式になった。


 卒業式で生徒会長の太陽は素晴らしい答辞を読んだ。


 卒業式でも太陽と話すことは出来なかった。


 たった一言あの時はごめんと伝えたかった。


 そして俺の中学生活は太陽との別れで終わりをつげたのであった。





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 中学卒業から春休みをあけて俺は高校生になった!高校は自宅から自転車で10分の距離の高校に進学した。


 今日から新学期…まだ卒業式の事は黒歴史である。今度こそあったら謝ろうと燐は新たな1歩を踏み出すのであった。


 まさか、この決意がすぐ叶い…また太陽と一緒にいられるなんて思いもしなかった。


 高校の入学式…新入生誓いの言葉を読んだのは太陽だった!!!しかもクラスわけでは同じAクラスになった。


 クラス表を見てると後ろから声をかけられた…この声は後ろを向かなくてもわかる太陽だと俺は涙が止まらなくなった。


『太陽!!あの時は傷つけてごめん…』


 しっかり謝ろうとしたのに…涙が止まらなくて後半は聞こえなかったと思う。


『もういいよ…燐』


 太陽は昔のように優しい笑顔で頭をよしよししてくれた…さらに燐の涙は止まらなくなってしまった。


 そして、冒頭のように一緒に通学するようになるのであった。


『本当にあれは黒歴史だーーー!』


 高校の入学式で大泣きした燐は学年では泣き虫燐のあだ名で有名になった。


 本人は自覚していないが燐も容姿は整っており入学式で泣いてた姿は怯えて泣いている子猫のようで多くの生徒の心をつかんだのであった。


 生徒の間では密かに子猫ちゃん呼ばれているのであった。







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