#10 そして、雨は上がる

 うずくまって、泣きじゃくっている少女。


 彼女を抱きかかえて、涙を流している少女。


 そして、雨の音。


 それだけが、そこにはあった。


 原子炉は、直っていた。


 異常な放射線も、なかった。


 結界からバラバラと現れたピース文字も、そこにはなかった。


 真実は、消えていた。


 鈍いシュウでも、そのことはわかった。


 ただ、目の前の二人が、なぜ涙を流しているのか、そのことはわからなかった。


 真実に立ち向かう扉ドア・トゥー・ザ・トゥルースで、彼女たちの意志を直接読み取ることも、可能ではあった。


 しかし、それはできなかった。彼の感情は、そうさせなかった。


 シュウは、考えた。


 ——僕は、彼女たちの泣いている意味をいずれ理解すべきであろうか。それとも——


 わからなかった。


 数十分の時が、流れた。


 ——そして、雨は上がり始めた。


 アイルは、立ち上がった。


「——ラン、行こう」


 アイルは、涙の枯れたランの手をとった。


 ランが弱々しく、立ち上がった。


 しかし、ランは、アイルの手を強く握った。


 二人は、歩きだした。


 シュウは、その二人の背中を見つめた。


 二人の背中は、もう泣いてはいなかった。

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