私の居場所 229

 折り紙コンサートホールの地下駐車場。ここにミニバンが現れました。ミニバンは停車。中に乗ってた8人は、ミニバンを降りました。

「さあ、行くぞ、お前ら!」

 その高浜さんの激に、真夜中のノックの一同応えます。

「おーっ!」「はい!」


 一同がステージに現れました。ステージにはすでに楽器類がセッティングされてました。日向隊員、真土灯里、明石悠はそれを見て、

「あは、みんなセッティングされてるよ!?」

 真土灯里は自分のギターを持つと、ジャーンとストロークでギターを鳴らしました。

「あは、ちゃんとチューニングされてる!?」

 日向隊員は電子ピアノにタッチ。ドレミファソラシドと軽やかに弾きます。

「ピアノもちゃんとチューニングされてんよ!?」

 絶対音感のある日向隊員は、千石さんのギターやキーボードの音、久領さんのドラムの音、代官さんのベースの音を聴き分けました。

「すべての楽器がチューニングされてる、ちゃんと? すごいなあ、ローディて!」

 明石悠は暗くてがら~んとした客席を見て、

「ここがいっぱいになるのか~! がんばらなくっちゃ!」


 それから少し時間が進みました。折り紙コンサートホール外観。隊長・女神隊員・寒川隊員が歩いてきました。隊長は何か気になってます。

「なんか、人いねーなあ、あまり・・・」

 そう、これから大ホールでコンサートがあるとは思えないほど人がいないのです。寒川隊員は嫌な予感が。

 寒川隊員は以前この折り紙コンサートホールでコンサートを開いたことがありました。黒部すみれと組んでた時代です。そのときは小ホールを使いましたが、あまり人は来てくれませんでした。

 今もそのときと同じくらいの人口密度。あのときは小ホールでしたが、今日は大ホール。これでコンサートするのか? 寒川隊員はかなり心配になってきました。

 エントランスが見えてきました。やはりあまり人がいません。と、隊長は横目で2人を捉えました。2人は女子中学生のようです。その会話を聞いてみると・・・

「え~ いないじゃん、人?」

「ほんと、コンサートすんの、ここで?」

「行こっか?」

「・・・うん!」

 2人はきびすを返しました。それを見てた隊長はため息。

「はぁ・・・ こりゃ、厳しいなあ・・・」


 舞台の端、どん帳と舞台袖の隙間から真夜中のノックの6人+高浜さんが観客席を見てます。観客席の観客は絶望的なほど少ない状態。千石さんはため息。

「はぁ、こいつはひどいなあ・・・」

 久領さんもぼやきます。

「オレたち3人が真夜中のノックを抜ける前にも、こんながらがらなコンサートホールで演奏したことがあったっけな・・・」

 代官さんはそれに応えるように、

「ああ、あったなあ、そんなこと・・・」

 久領さんも応えるように、

「あのときよりもひでーんじゃねーか、こりゃあ?・・・」

 高浜さんが質問。

「どうする、みんな? コンサートやめるか?」

 千石さんは苦笑い。

「あはは、いくらなんでもそりゃあだめだろって!」

 高浜さん。

「しかし、無料で招待したはずの中学生があまりいないような?・・・」

 それを聞いて明石悠は思いました。

「きっと私のせいだ・・・」

 そう、明石悠は肌が黒いという理由だけで中学校でひどいイジメを受けてきました。1億円以上も恐喝された挙句、毎日集団レイプされてたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る