私の居場所 224

 啓一は思い出しました。昨日インターネットでとある不動産屋のホームページを見たときのことを。それによると、2つの物件は売りに出されていたのです。

「ちょっと調べてみたらわかったんだよ。真土灯里あいつの家の隣りの家も、その後ろの家も空き家だったんだよ!」

 啓一は持ってた日本刀をリーゼントの男に渡し、

「ちょっと持っててくれ」

 今度はモヒカンの男に合図。

「おい!」

「はい!」

 モヒカンの男は何かを啓一に渡しました。それは大型の番線カッター(ボルトクリッパー)。薄い金属ならなんでも切断してしまう工具です。

「昨日はびびっちまったが、今日こそは決めてやるぜ!」

 啓一は眼の前の金網のフェンスを番線カッターで切り始めました。すぐに金網フェンスは切れ、大きくてまん丸な穴が開きました。啓一は得意顔。

「あは、切れたー!」

 モヒカンの男はその穴をくぐると、そこにあった家を見ました。

「ほんとだ、真っ暗だ。こりゃあこの家も、空き家にちげーねぇーや!」

 啓一は今度は真土邸との間を隔てるフェンスに番線カッターの刃を入れました。

「今度はこいつだ!」

 そのフェンスにも大きな穴が空きました。3人は真土邸の敷地に入りました。啓一はしたり顔で、

「よーし、真土灯里あいつの家に入ることができたぞ!」

 啓一は番線カッターをモヒカンの男に差し出し、

「おい!」

 モヒカンの男はそれを受け取ります。

「はい!」

 次にリーゼントの男が啓一に日本刀を差し出します。

「はい、坊ちゃん!」

「おお~!」

 啓一は日本刀を受け取ると、それを凝視します。そして母親老松かよを思い出し、

「ふふ、こいつでお袋あいつの鼻をあかしてやるぜ!」

 モヒカンの男とリーゼントの男は歓喜の声をあげます。

「いよいよですね、坊ちゃん!」

 次の瞬間、強烈な光が一瞬でパッとともり、啓一たち3人に浴びせられました。思わず顔をそむける啓一たち3人。

「な、なんだ、この光は!?」

 光源の近くにたくさんの人影が見えます。その影の1つが1歩前に出ました。見えてきたその顔は、かつて啓一たちに撃退された少年課の四之宮警部でした。

「老松啓一、逮捕だ!」

 四之宮警部の背後には機動隊の隊長がいました。彼も啓一に撃退されたことがあります。

「いよ~ いつぞやはお世話になったなあ!」

 それ以外の人影は、機動隊員でした。全員さすまたで武装してます。びびる啓一たち3人。

「ひーっ!」

 3人は振り向き、

「逃げろーっ!」

 3人は駆けだそうとします。が、その方向からも強烈な光が襲ってきました。啓一たち3人は、思わず両手で光を遮りました。

「うわっ!・・・」

 光は今啓一たちが侵入してきた隣地から浴びせられました。こちらにも機動隊が配置されてたのです。つまり啓一たち3人は、多数の機動隊員が潜んでる真土邸とその隣地の潜り込んでしまったのです。

 啓一は日本刀を抜き、

「くそーっ、もうこーなったらーっ!」

 啓一たち3人は機動隊員に突っ込んで行きます。

「破れかぶれだーっ!」

 機動隊の隊長はニヤッと笑うと、持っていたさすまたで啓一の胸を捉えます。さらに左・右・後方からもさすまたが伸びてきて、啓一の身体を捉えます。それでも啓一はもがきます。

「くそーっ! なんだ、こんなもん!」

 その口をふさぐように、顔面にもさすまたが。衝撃で前歯が飛びます。これは痛い。

「うぎゃーっ!」

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