私の居場所 204

 後ろのパトカーの運転席と助手席から2人の警官(これも公安7課の刑事)が降り、隊長と日向隊員のところへ急ぎました。隊長と日向隊員はちょうど立ち上がったところ。隊長はカメラで撮影してる若者を横目で見て、駆け付けた刑事たちに、

「あいつ、ずーっと撮影してるんだ。あれを公表されたらまずいぞ。すぐに身柄を確保してくれ!」

「了解!」

 2人の刑事は若者に向かって歩を速めます。若者は撮影に夢中なせいかその2人に気づきませんが、あるところではっとして、

「え!?」

 2人の刑事はすぐ眼の前まで来てました。

「な、なんだよ?」

 刑事の1人。

「何してる?」

 別の刑事は横目でパトカーに乗せられてる啓一たちを見て、

「おまえ、あいつらの仲間だろ!?」

 あまりにも突飛な詰問に若者はびっくり。

「ええ? オレはな~んも関係ないですよ!」

「じゃ、なんでここで撮影してるんだ?」

「怪しいな!」

 刑事の1人は横目でもう1人の刑事を見て、

「おい、身柄の確保だ!」

「はい!」

「ちょ、ちょっと・・・」

 その刑事は若者のカメラを握る手首を掴み、後ろ手に捻り上げました。

「いててて・・・ 何するんだよ!」

「静かにしろ!」

 もう1人の刑事は、若者のカメラを取り上げました。若者はそれに気づき、

「おい、勝手に触んなよ! それはオレのカメラだぞ!」

 が、ここで急に何かを思い出し、突然態度が変わりました。

「ぎゃははは~! 今そのカメラで生放送してたんだ! おまえらのやったこと、全部ばらしてやったからな、世界中に!」

 その言葉に2人の刑事はびっくり。

「なんだって!?」

 日向隊員と隊長もびっくり。

「ええーっ!?・・・」

 刑事の1人は慌てて肩のマイクを握ると、

「緊急! 緊急! 作戦を中止、通常逮捕に移行!」

 それに対する反応はしばらくはありませんでしたが、

「・・・了解!」

 と、か細い声で返事がきました。

 日向隊員は何が起きてるのかイマイチ把握できませんが、事態は悪い方向に向かってることはなんとなく理解してるようです。

 と、日向隊員の眼はアスファルトに転がってる真土灯里の首を捉えました。

「ああ・・・」

 日向隊員は首の前に片ひざをつき、両手で挟み込むように首を持ちました。日向隊員の背後に隊長が立ちました。隊長は開きっぱなしの真土灯里の両眼が気になりました。

「日向、眼は閉じさせた方がいいな」

 日向隊員はうなずくと、左手で首の後頭部を持ち、右手の指で開きっ放しの眼を閉じました。日向隊員の両眼から涙がこぼれ落ちます。そして首を抱きしめ、思いっきり泣きました。

「うわーっ!」

 隊長は憤まんやるかたない表情です。と、隊長は明石悠の顔を思い出し、はっとしました。

「そういや、あのは?」

 隊長はあたりを見回しました。すると自分のセダンの開け放たれた助手席のドアの前に倒れてる人影を見つけました。明石悠です。

「おいおい、気を失ってんのかよ!?・・・ ま、むりもないか。大事な友達の首を眼の前で斬り落とされちゃあなあ・・・」

 隊長は明石悠の身体に駆け寄りました。


 薄暗い中、イスにいつもの服装の黒部すみれ隊員が座ってます。腕組みをし、眠りこけてました。前方からのブルーライトが顔に当たってます。と、男性の声が聞こえてきました。

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