私の居場所 205

 男性は電話してるようです。

「はい・・・ え、真土灯里が殺された!?」

 それを聞いて黒部すみれは、がばっと眼が醒めました。

「ええっ!?」

 黒部すみれの眼の前には、いつも黒部すみれと行動をともにしてる男性が立っており、スマホを電話として使ってました。

「老松啓一に首を斬り落とされた?・・・」

「そんなバカな!?」

 黒部すみれは猛スピードで立ち上がると、眼の前のドアに手をかけました。


 夜。道端にいつものワンボックス車が駐まっていて、今その後部のスライド式ドアがガラッと開き、慌てた表情の黒部すみれが降車してきました。

 黒部すみれは眼の前の建物を見上げました。それは年季が入ったマンション。黒部すみれはその1室を見ました。煌々としたあかり。黒部すみれはつぶやきました。

老松啓一あいつ、あの部屋にいるんじゃ?・・・」


 車内。黒部すみれのパートナーの男性がモニターを見ました。モニターは4分割になっていて、それぞれエレベーター内、非常階段、廊下、エントランスが映し出されてます。

「エレベーター、非常階段、廊下、エントランス・・・ もし老松啓一がマンションの外に出たとしたら、このカメラに絶対映るはず? け、けど、一度も映らなかった?・・・」

 黒部すみれたち2人は啓一たちが昨日トンネルの中で入れ替わったことにいまだに気づいてないようです。

 男性はつぶやきました。

「こんなことになるんなら、やっぱあの3人を逮捕しておくんだった・・・」

 そう、この男性と黒部すみれはいつでも啓一たち3人を逮捕できたのです。けど、2人が所属してる公安7課は、監視すれど逮捕はしませんでした。何か考えがあったようです。


 後部座席に寝かされている明石悠。長身のせいか、ひざを少し折り曲げてます。と、眼を醒ますようです。

「う、うう・・・」

 明石悠の眼が開き、同時にはっとしました。後部座席に座ってた日向隊員が後ろに振り向き、

「明石さん、眼が醒めた?」

 ちなみに、ここは隊長が運転するセダンの中。今セダンは走行中。外は街灯や家の灯が乏しい街道です。

 明石悠が質問。

「ここは?」

 日向隊員が応えます。

「香川さんのクルマの中だよ」

 明石悠は頭に?を思い浮かべました。今度はハンドルを握ってる隊長が、

「君を病院に連れて行く途中だ」

 明石悠は少し考えると、

「あ、あの・・・ 真土さんは?」

 日向隊員は応えに窮しました。隊長はそれを横目で見るとため息。そして重い口を開けました。

「君が見た通りだ」

 明石悠は残念そう。

「・・・あれは夢じゃなかったんだ?・・・

 真土さんは殺された・・・ なんで・・・ なんで真土さんがられなくっちゃといけないの? るんなら私をればいいのに・・・ あいつら、私に恨みがあるんでしょ!?」

 隊長は今度は応えることができません。日向隊員も同様でした。

 明石悠は啓一を思い出し、ぽつり。

「あいつ、日向さんの首ももいだこともあったよね?」

 日向隊員は思い出しました。啓一に側頭部をバットで殴られ、首がもげてしまったときのことを。で、心の中で小さく苦笑い。

 明石悠は言葉を続けます。

「真土さんもメガヒューマノイドだったらよかったのに・・・」

 明石悠はスマホを取り出し、その画面を見ました。すると顔色が一瞬で変わりました。

「な、何、これ?・・・」

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