私の居場所 202
住宅街の夜。と言っても、家々から漏れてくる
電柱の陰に2つの人影が見えます。公安7課の刑事が化けた制服警官です。1人が腕時計を見ました。
「交代まであと30分か・・・」
もう1人の刑事。
「まったくこんなところに立ちっ放しって、思った以上に疲れんなあ・・・」
と、刑事の1人が何かに気づきました。
「ん?」
それは20歳前後の男性。右手にはムービーカメラがあります。それを進行方向に向けて歩いてきました。刑事の1人はそれを見て、
「またネット民か?」
もう1人の刑事が応えます。
「らしいな」
「まったくいつまで経っても懲りない連中だなあ、おい・・・」
刑事の1人がそう言うと、歩き出しました。もう1人の刑事がそれを見て質問。
「追っ払ってくんのか?」
「ああ」
刑事が電柱の陰から出てきました。が、次の瞬間この刑事がヘッドライトに照らし出されました。隊長のセダンが現れたのです。刑事ははっとして足を止めました。
「ちっ!・・・」
カメラを持った若者もはっとし、近くにあった電柱の陰に隠れました。
セダンが真土邸の門扉の前で停車。若者はそのセダンにフォーカスを合わせました。
セダンの門扉に面した後部ドアが開き、真土灯里が降車しました。ワンテンポ遅れて反対側のドアが開き、日向隊員が降車。と同時に助手席のドアが開き、明石悠も降車しました。
自分の家の門扉を開けてる真土灯里。日向隊員は背伸びしてセダンのルーフ越しにその真土灯里を見て、
「また明日!」
「うん、また明日!」
明石悠。
「明日がんばろうね!」
「うん!」
と元気に応えると、真土灯里は門扉を閉めました。日向隊員と明石悠は車内に戻りました。バタン! 明石悠はドアを閉めました。
一方日向隊員はドアに手をかけた瞬間、何かを感じました。
「え!?」
日向隊員は再びセダンを降りました。隊長はドアミラーに映ったその日向隊員に気づき、
「ん?」
日向隊員は真土邸の門扉へと急ぎ足。隊長もドアを開け、セダンを降り、日向隊員を見て、
「おい、どうしたんだよ、日向!?」
次の瞬間、隊長の顔は驚きの表情になりました。
「ああ!?・・・」
真土邸の門扉のすぐ向こう側に人が立ってるですが、どう見ても真土灯里ではありません。サングラスをかけた男。これは・・・ 啓一です。
啓一はどや顔。その右手には日本刀、左手には何かが握られてます。啓一はそれを誇示するように日向隊員に向けました。
バスケットボールほどの大きさ。髪の毛が生えてます。啓一はその髪をむんずと掴んでます。街灯に照らし出されたその物体は・・・ 真土灯里の首でした。
真土灯里は自分の家の門扉から玄関まで歩く間に、暗闇に潜んでいた啓一たちに襲われ、日本刀で首を切断されたのです。
真土灯里の首はカッと見開いたまま。切断面からは血がしたたり落ちてます。日向隊員は愕然。
「し、真土さん? 真土さんなの!?」
カメラで撮影してた若者もびっくりしてます。
「こ・・・ こいつぁとんでもないものを撮影しちまったぞ?・・・」
2人の刑事は地団駄を踏んでます。
「あいつら、どこから入り込んだ、あの家に!?」
「あちゃー こいつは責任もんだぞ、オレたち?・・・」
啓一は日向隊員に真土灯里の首を突き出し、
「そこにいるのは日向愛か!?」
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