私の居場所 185

 千石さんに続いて代官さんが、

「ふふ、こいつは楽しみだ!」

 最後に久領さんが現れました。

「こりゃあ、心して聴かないといけないな!」

 それを聞いて日向隊員は苦笑い。

「あは、真土さんが作った曲というより、真土さんのお父さんが作った曲なんだけどね・・・」

 真土灯里は財布を取り出し、いつもの硬貨を取り出し、それをピックにしてジャラ~ンとギターを1発ストロークで弾きました。

「あは、チューニングはあってる」

 真土灯里はあらためてギターを構え、

「じゃ、いきます!」

 真土灯里はバラード調に歌い始めます。日向隊員はそれを聞いて、

「あは、バラード調にして歌い始めた、サビの部分を!」

 日向隊員は真土灯里が自分のアドバイス通り歌い始めたものだから、思いっきりえびす顔になりました。

 一方高浜さんは、真土灯里のヴォーカルが始まると、一瞬で唖然とした顔になりました。

「え?」

 諏訪さんもびっくりしてます。

「こ、この曲は?・・・」

 真土灯里のギターがハイスピードになりました。そしてメロの部分を歌い出しました。すると高浜さんは、

「この曲はやっぱ?・・・ ああ~!・・・」

 そして両手で自分の眼をふさぎました。何かにいたたまれなくなったようです。その行動に気づき、日向隊員はびっくり。

「ええ~!?」

 千石さんも代官さんも久領さんもこの異常な行動に気づきました。

「お、おい、どうした、高浜?」

 真土灯里もびっくりして歌とギターを止めました。

「ど、どうしたんですか?」

 高浜さんは顔をあげ、真土灯里を見ました。

「これは君が作った曲じゃないな?」

「・・・はい、父が作った曲です」

「は~!」

 高浜さんはため息をつきました。そして心の中で、

「なんでこの曲をここで?・・・ 何も知らないのか、この?」

 千石さんはそんな高浜さんをを見て、

「何かあったみたいだな、この曲で?」

「ああ・・・ この際だ、みんなに話しておいた方がいいな・・・

 undercoverて曲がヒットしたの、みんな、知ってるよな?」

 千石さんが応えます。

「ああ」

 代官さんと久領さんも応えます。

「もちろん!」

「実はあの曲、詞もメロディも真土が作ったんだ」

 と、高浜さんは真土灯里に気づき、

「ふ、ここじゃ真土勝之とフルネームで言った方がいいな。

 実はそれ以前の真夜中のノックの曲は、真土勝之あいつが鼻歌とギターでメロディを作り、オレがそれに詞を当てはめていくというパターンで作ってたんだ」

 代官さん。

「へ~ オレたちが辞めたあとは、そんなルールになってたんだ?・・・」

「ああ、印税を均等に分けるつもりだったんだ。

 オレと真土勝之は2人で作った曲を毎晩毎晩ライヴハウスで歌ったな。どこのライヴハウスに出てもフルハウス、大盛り上がりだった。なのに真夜中のノックはちっとも売れなかった。インディーズレーベルの限界だったんだろうな、きっと。

 そんなある日、見附が訪ねてきたんだ。場末のライヴハウスの楽屋に」

 それを聞いて日向隊員はびっくり。

「え? 見附って・・・ Technical-Hの見附さん?」

「ああ、この前テレビで一緒になったやつだ。見附やつは・・・ Technical-Hは当時から相当売れっ子バンドだった。見附やつはオレたちのデビュー曲をカバーさせてくれと言ってきたんだ」

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