私の居場所 182
真土灯里が自分の家の中に消えると、隊長のセダンは発進しました。モヒカンの男は啓一を見て、
「見ての通りですよ。これじゃあ、とても襲撃できませんよ、あいつ・・・」
すると啓一は含み笑い。
「ふふ、何を言ってるんだ、お前ら? いい手があるじゃんかよ! あの家に入ったところを襲うんだよ!」
モヒカンの男。
「ぼっちゃん、それはムリっすよ。四六時中見張ってるおまわりがいるんですよ、あの家」
リーゼントの男がある方向を指差し、
「あそこを見てくださいよ!」
「ええ~?」
どうやら暗すぎて、啓一の眼は捉えることができないようです。するとモヒカンの男が啓一に双眼鏡を差し出しました。
「これで見てください!」
「ああ」
啓一は双眼鏡を受け取り、その方向を見ました。
双眼鏡の中、電信柱の陰に立つ2つの人影。2人とも警官の制服を着てます。
「あんなところにおまわりが?・・・」
ちなみに、この2人の警官、正規の警官ではなく、公安7課が用意した警官です。
リーゼントの男。
「だからオレたち、こんな遠くから見るしかないんですよ」
啓一は考え込んでしまいました。
「う~ん・・・」
と、啓一は真土邸を見回して、あることに気づき、ニヤッとしました。
「ふふ、まだいい手があるじゃないか!」
翌朝、1台のセダンが走ってます。運転席には隊長の姿があります。昨日とはまた違うセダンです。後部座席には日向隊員と明石悠が座ってます。日向隊員は心配顔になってました。
セダンが真土邸の前に停車。すると真土邸の門が開き、1つの人影が出てきました。真土灯里です。真土灯里は不機嫌なオーラを放ってません。笑顔です。それを見て日向隊員はほっと安心。
「あは、不機嫌じゃない?」
真土灯里は後部座席のドアを開けました。いつも座ってるシートに座る気です。が、そこではっとしました。
「え?」
そこには明石悠と日向隊員が。
「あは、そっかあ。昨日私、わがまま言っちゃったから・・・」
そう、昨日家に帰るとき、真土灯里は不機嫌全開。その原因を作った日向隊員と少しでも距離を置くために助手席に座ったのです。
ちなみに、助手席にはいつも明石悠が座ってるのですが、昨夜は真土灯里に追い出され、後部座席に座ってました。そんなわけで今朝は、後部座席に座ってました。
真土灯里は助手席のドアを開け、
「あは、こっちに座るよ、私!」
隊長のクルマが走り出しました。
隊長のセダン内、真土灯里が横目で日向隊員を見て、
「日向さん、昨日はごめん・・・」
日向隊員はびっくり。
「えっ!?」
「家に帰ってサビから始まるヴァージョンとメロから始まるヴァージョンを歌い比べたんだ」
「I'm proud of youを?」
「うん。正直サビから始まる方がずーっとインパクトがあった。日向さんの言った通りだったよ!
ほんとうのこと言うと、あの曲、お父さんが作った曲なんだ」
「ええ~!?」
なんと日向隊員は、真土勝之が作った曲に注文を出していたのです。日向隊員は恐縮してしまいました。
真土灯里の発言が続きます。
「お父さんだってすべてが万能じゃなかったんだと思う。実際歌ってみてわかった。日向さんの方がずーっと正しかったよ」
「そ、そんなことないって・・・」
日向隊員はさらに恐縮してしまいました。
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