私の居場所 174

 明石悠はそんな日向隊員が気になり、

「どうしたの、急に笑顔になって?」

「あは、なんでもないよ」

 と、突然3人の後方から、

「あ、真夜中のノックの人だ!」

 3人ははっとして振り向きました。するとそこには3人と同じ制服を着た女子中学生2人組が。

「昨日ミュージックレッツゴー!見たよ!」

 すると3人の表情が緩みます。

「あは」

 2人組は言葉を続けます。

「今度学校でも演奏してよ!」

 日向隊員は笑顔で応えます。

「うん、やるよ、そのうち!」

「期待してるよ!」

 明石悠は横目で日向隊員を見て、

「あは、私たち、大人気になってる!」

 日向隊員は笑顔で応えます。

「うん!」

 と、日向隊員ははっとして、横目で真土灯里を見ました。彼女も明るい顔になってました。それを見て日向隊員は安心しました。昨日真土灯里は、やはり登校時みんなに声をかけられ、それに恐怖に感じてたからです。

 真土灯里は小学生のとき、テレビで天才的ギターテクニックを披露し、学校中のみんなからちやほやされたことがあったのですが、父親のありもしない盗作問題でたった1日でイジメられる立場になってました。かなりひどいイジメを受けたようです。

 だからみんなにちやほやされることに恐怖を感じてるようです。けど、今日はそんなことはないようです。

 3人は中学校のそばに来ました。声をかけて来る生徒はどんどん増えていきます。日向隊員と明石悠は笑顔でそれに応えます。

「あは、ありがとう!」

 真土灯里は声は出さないものの、笑顔を見せてます。

 そして3人はいよいよ校門に到達しました。そこにはたくさんの生徒が待ち受けてました。

「真夜中のノックの人が来た!」

「ねぇ、私たちにも聴かせてよ、あの歌を!」

 日向隊員は満面の笑みに。そして照れ笑い。

「あははは・・・」

 すると真土灯里が、

「ねぇ、みんなで歌おうよ、明日、ここで!」

 それを聞いて日向隊員はびっくり。

「えっ!?」

 けど、すぐに笑顔になり、

「うん、そうしよう!」

 そして思いました。

「よかったあ・・・ 真土さん、もう恐怖心が消えてんよ!」

 明石悠が質問。

「どうすんの? 千石さんたち呼んでくんの?」

 日向隊員が応えます。

「以前ストリートライヴやったときみたいに、ペースとドラムは打ち込みでいいじゃん! 3人でやろう!」

「あは、そっかあ!」


 日向隊員は自分の教室に入ると、教室内のボルテージが一気に上がりました。クラスのみんが歓声をあげたのです。

「うわーっ!」

 日向隊員は思わず赤面。

「あは・・・」

 さっそく昨日と同じように、女生徒Bがアコースティックギターを差し出しました。

「ねえ、今日もあの曲、聴かせてよ!」

 昨日は正夢のお告げの通り、バケツで水をぶっかけられると思った日向隊員は、この瞬間悪寒を感じましたが、今日は喜んでギターを受け取りました。

「OK!」

 日向隊員はギターをジャーンと鳴らしました。

「あは、今日はチューニング合ってる!」

 女生徒B。

「今日はチューニング合わせておいたよ、あらかじめ!」

 女生徒Aはすでにうずうずしてます。

「ねぇ、早く聴かせてよ!」

「うん!」

 日向隊員はギターをジャーンと1発鳴らすと、次の音からはスリーフィンガーの高速アルペジオに。そして歌い出しました。岬クルージング。

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