私の居場所 173

 例の掲示板もやられっぱなしじゃありません。例の暴露を書き込んだ者がどのプロバイダーを経由して書いたものなのか、そのIPアドレスを公表したのです。

 しかし、そのIPアドレスが示すプロバイダーは、この世には実在してませんでした。いったいどこの誰が書いたものなのか、まったくの謎だったのです。

 そんなわけで、名前をさらされたネット民は、どこからも救済されませんでした。憤まんやる方ないネット民が怒りをぶつける先は、やはり例の掲示板でした。例の掲示板は荒れに荒れ、収拾がつかなくなり、一時閉鎖に追い込まれました。


 話をこの日の朝に戻しましょう。ここは日向隊員の家とされてる住宅。閉じた門の向こうに中学校の制服姿の日向隊員が立ってます。

 と、その前に突如タクシーが停車しました。その後部座席のドアが開き、明石悠が降りました。明石悠も制服姿。それを見て日向隊員は笑顔に。門を開け、歩道に出て、

「おはよう、明石さん!」

 明石悠も笑顔で応えます。

「おはよ!」

 タクシーが走り出しました。と、間髪入れず、そこにまた別のタクシーが停車しました。

その後部座席のドアが開き、真土灯里が降りました。真土灯里も制服姿。それを見た日向隊員と明石悠があいさつ。

「おはよ、真土さん!」

 真土灯里も同じように応えます。

「あは、おはよ!」

 日向隊員。

「じゃ、行こっか!」

 他の2人が応えます。

「うん!」

 3人が1つになって歩道を歩き始めました。

 実は真土灯里と明石悠は隊長からタクシーのチケットを渡されてました。この2人、いつ、どこで、誰に襲われるのかわかりません。そんな危ない状況にいます。特に明石悠は老松啓一一派に襲われる可能性大。

 だから隊長は2人にタクシーのチケットを渡し、これで登校するようにお願い、なかば命令したのです。

 ほんとうだったら隊長がいつものように3人を中学校に送り届けたかったのですが、前述の通り、この朝隊長はあの作戦を遂行中でした。だからタクシーのチケットを2人に渡してたのです。

 けど、2人は日向隊員と登校することを望みました。今3人は夜中のノックというロックバンドのメンバー。なるべく一体となって行動したかったのです。

 そこで真土灯里と明石悠は一計を案じました。隊長には、

「香川さんの言う通り、タクシーのチケットで登校します」

 と連絡。その一方で日向隊員にはこう連絡しました。

「明日日向さんの家にタクシーで行くよ。みんなで一緒に登校しよう!」

 日向隊員は2人の意志を汲んでその通りにすることにしたのです。


 3人は住宅街に入りました。すると日向隊員は道端を掃除をしてるおじいさんに気づきました。日向隊員が登校するとき、いつも逢ってるおじいさんです。

 日向隊員は思い出しました。このおじいさんに朝のあいさつをしたのに、完全無視されたことを。

 日向隊員は心配顔でそのおじいさんに声をかけました。

「おはようございます!」

 その呼びかけにおじいさんははっとし、振り返り、日向隊員を見ました。すると笑顔になり、

「おはよう!」

 とあいさつを返してくれました。それを見て日向隊員の顔はぱっと明るくなりました。

「あは、おじいさん、昨日のミュージックレッツゴー!、見てくれたんだ!」

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