私の居場所 172

 しかし、彼らには情けというものはないのてじょうか? 相手は普段ネット上で会話してる仲間ですよ?

 実はネット民は、自分が面白ければそれでいいのです。例え攻撃対象がいつも会話してる仲間であっても、そのときの雰囲気で徹底敵攻撃してくるのです。機会は絶対見逃しません。


 ここにもそんな自業自得な人物がいました。日向隊員たちが生徒会長と呼んでる女子です。生徒会長は自室のパソコンの前で顔面蒼白になってました。

 パソコンのディスプレイには、罵詈雑言が羅列してました。その文章すべてあの日、あのとき、生徒会長自身が例の掲示板に書き込んだ文章でした。

 スマホにもパソコンにも、メールがかなり届いてましたす。が、生徒会長は一切見ません。ネット民が送ってきた物だとわかってるからです。内容は間違いなしに罵詈雑言。

 先ほど下の階の固定電話がジャンジャンなってました。電話の内容は、この書き込みへの抗議。ま、すべて悪ふざけでしたが。なお、今は母親が受話器を上げっぱなしにしたせいか、鳴ってません。

 ピンポン! ピンポン! ピンポン! また玄関の呼び鈴が鳴りました。もう鳴りっぱなしと言った方がいいでしょう。けど、誰もドアを開けません。いたずらだとわかってるからです。

 と、突然ガチャーン! ガラスの割れる音が。誰かが面白半分でこの家の窓ガラスに投石したのです。

「もうやめてーっ!」

 母親らしき女性の悲鳴が下の階から響いてきました。それを聞いた生徒会長は、さらに顔面が真っ青になりました。全部私のせい・・・ 名前と住所を晒されると、これだけの被害を被るのです。

 生徒会長は完全に追い込まれてしまいましたが、追い込まれたのは生徒会長自身だけではなかったようです。

 掲示板にはこれを書いたとされる人物の名前が記してありました。それは生徒会長の父親の名前でした。プロバイダーと契約してる人物が父親だったもので、父親の名前が記載されたのです。

 父親はそれ以前の生徒会長の愚行で、県議会議員を辞めてましたが、次の県議会議員選挙を目指し、すでに必勝態勢になってました。しかし、この事件でそのすべてがおじゃんになってしまいました。

 父親は失意のどん底に。家を引き払い、地方の町へ引っ越しました。バカな娘を持つと父親は大変です。


 この暴露の書き込みは、元の書き込みがあった掲示板で行われました。被害を受けたネット民の大半は、この掲示板の運営に抗議のメールを送りました。かなり汚い言葉を並び立てたようです。

 また、別の掲示板にこの運営を非難する、または中傷する書き込みを津波のように行いました。一瞬で溜まった鬱憤を運営にぶつけてきたのです。

 非難された運営はたまったものじゃありません。普段めったに行わない削除を素早く実行しました。

 しかしです。攻撃する側のネット民は、それよりも早くそのデータを自分のパソコンに取り込んでました。そしてそれを他の掲示板に次々とコピー&ペーストしていったのです。

 ネットの世界では一度拡散が始まってしまうと、止めることはまず不可能。例の掲示板に載ったネット民の名前は、あっという間に日本国中にさらされたのです。

 それに比例するように、例の掲示板に向けられた非難と中傷は、どんどんヒートアップしていきました。

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