私の居場所 169

 2人の警官は顔面血だらけの遠藤原を見て、

「はぁ・・・ こいつ、自力で動けそうにないなあ?・・・」

 1人の警官はもう1人の警官を見て、

「おい!」

「はい!」

 2人の警官はそれぞれ両脇の下と両足首を持ち、遠藤原の身体を持ちあげ、そのままパトカーに。

 頭の方を持った警官は、思わず顔をそむけました。

「うわ、こいつの身体もくっせーなー!・・・」

 足首を持った警官も、

「ネット民と言われてる人種の身体は、なんでみんなこーも異臭を放ってるんだ?・・・」

 実はこの2人、以前未明に真土灯里邸を火焔瓶で襲撃しようとしたネット民の男を寸前で阻止した警官でした。つまり公安7課の刑事。正規の警官ではありません。ある意味ニセの警官です。

 画面から消えて行くこの2人のニセ警官を見ながら、隊長はぽつり。

「これ、全部やるとしたら、キリがないなあ・・・」

 隊長は寒川隊員を見て、

「お前のいう通り、あのデータ、全部公開しちまおうか?」

 寒川隊員は笑顔に。

「ええ、そうしましょう!」

 高浜さんはこの2人の会話を聞いて、疑問が浮かんだようです。で、質問。

「いったいなんなんだ、あなたたちは?」

 隊長は応えます。

「ふ、警官ですよ、ただの。

 そういゃ、あなた、来年行われる参議院選挙に与党で立候補するそうじゃないですか、比例の方で?」

 高浜さんはびっくり。

「え!?」

 まさにその通りでした。隊長は言葉を続けます。

「こんなことしてたら、それは取消になるかもしれませんよ。あとは我々がやっておきましょう!

 しかし、なんで選挙に?」

「今の日本の間違ったネット社会をぶっ壊すためですよ!

 日本じゃネットで中傷されて裁判所に訴えても、プロバイダーはなんだかんだ理由をつけて犯人を徹底的に隠す。犯人を判明させるだけでも、2~3年はかかるんですよ!

 やっと犯人がわかって慰謝料を請求しても、裁判所が認めてくれる慰謝料は、請求額の1/10以下。その金額じゃ、被害者は弁護士費用さえ回収できないんですよ!

 しかも犯人は、その微々たる慰謝料も払っちゃくれない! これじゃ、話にならないっすよ!

 自分は議員になって法律を変えるつもりだ! プロバイダーは裁判になったら、1週間以内に情報を開示させる! もし開示しないのなら、そのプロバイダーは業務停止にさせる!

 加害者が民事裁判で確定した賠償金を払わなかったときは、スマホを含め、すべてのプロバイダーとの契約は無効にする!

 賠償金は懲罰的賠償金として、確定した賠償金に10倍以上の係数をかける。裁判して勝ったのに、その結果被害者はさらに赤字になるなんて、どう考えたっておかしい!」

「なんで与党から立候補を?」

「日本の野党はだめだ! やつら、ネット民を規制する話が出ると必ずしゃしゃり出て来るだろ!? そしてお決まりの表現の自由だ! 言論の自由だ! ネット民と同じこと言いやがる!

 何が表現の自由だ! 言論の自由だ! だよ! 他人の人権を傷つける行為は、当然犯罪に認定しなくっちゃいけないだろ!?」

「けど、与党の中にも、例の事件のときネット民に理解を示していた議員も数人いましたよねぇ?・・・」

「オレが選挙で大勝すればいい! もしオレがたくさん票を獲って当選したら、やつら、オレの言うことに絶対耳を傾けるはずだ!」

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