私の居場所 168

 高浜さんは隊長を見て、

「さっきこの人、ここの住所、言ったか、電話で?・・・」

 道端に駐車したワンボックス車の運転席のドアと助手席のドアが開き、それぞれ男性が1人降りました。運転席から降りた男性は倉見隊員、助手席から降りた男性は橋本隊員です。

 2人が着てる制服ぽい服は、先ほどマンションの屋上にいたときと同じものです。

 橋本隊員は隊長の側に来ると、

「お待たせしました、鍵の救済社です!」

「朝からすみません!」

 と応答すると、隊長はマンションを見上げ、

「このマンションの10階の部屋を開けてもらいたいのですが」

「わかりました!」

 橋本隊員は倉見隊員を見て、

「よし、行くぞ!」

「はい!」

 2人はマンションのエントランスに小走りで向かいます。高浜さんはその2人の手元が気になりました。

「ん、何も持ってない? この2人、鍵屋じゃないのか? 鍵屋だったら道具を持ってないといけないだろ?・・・」

 高浜さんは2人の背中の「鍵の救済社」の文字を見て、

「で、でも、鍵屋だよなあ、このユニホームは?・・・」

 遠藤原は慌てます。2人に向かって猛ダッシュ。

「おい、ちょっと待てよ!」

 遠藤原が2人に追いつきました。右手を伸ばし、橋本隊員の袖口を掴みます。

「待てと言ってんだろ!」

 すると橋本隊員はわざとらしくバランスを崩しました。

「うわ・・・」

 橋本隊員の身体はドシーンと倒れました。それを見て倉見隊員はわざとらしく激怒。

「な、何しやがんだ!」

 遠藤原。

「ち、違う! わざと転んだんだよ、こいつ!」

 倉見隊員は遠藤原の襟元を両手で掴み上げ、その首を絞めあげます。

「ふざけんなーっ! お前が今暴力を振るったんだろ!」

 遠藤原は苦しそう。

「く、ぐるしい・・・」

 と、遠藤原と倉見隊員の間に隊長が身体を入れました。隊長は倉見隊員の顔を見てニコッと笑顔を見せました。倉見隊員もそれを見てニコッと笑顔を見せました。

 一方遠藤原は苦しそう。息がぜーぜーしてます。

「く、くそう・・・」

 その遠藤原の肩を叩く指先。遠藤原ははっとし、顔を上げました。

「な、なんだよ!?」

 そこには隊長が。隊長は右こぶしにタオルを巻き、その腕を思いっきりテイクバックしてます。

 次の瞬間、隊長の右こぶしが遠藤原の口に思いっきり炸裂しました。遠藤原の身体は数メートル先まで吹っ飛んでいきます。

「ふんぎゃーっ!」

 遠藤原の身体は仰向けで地面に転がりました。前歯を数本折られ、その歯ぐきから血が噴き出してます。また、かなりの衝撃だったのか、身体全体がピクピクけいれんしてます。

「ふががが・・・」

 隊長は寒川隊員を見て、

「おい、逮捕だ!」

「はい!」

 寒川隊員は手錠を持ち、遠藤原に駆け寄ります。そして遠藤原の右手首を掴み、

「遠藤原紀一、暴行罪で現行犯逮捕だ!」

 カチャッ! 遠藤原の左手首に、そして右手首に手錠がかかりました。

 ここにもう1台のパトカーが現れました。パトカーは隊長たちが乗ってきたパトカーの背後に停まり、運転席のドアと助手席のドアが開き、それぞれ1人の男性警官が降りました。

 2人の警官は小走りで隊長の側にきました。そして隊長に敬礼。隊長も敬礼しました。隊長は横目で横たわってる遠藤原を見て、

「この男を暴行罪で現行犯逮捕しました!」

「了解、連行します!」

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