私の居場所 167

 寒川隊員。

「特に今回の事件は、前回の事件とまったく同じ侮辱罪ですからねぇ。裁判官はいっさい忖度しませんよ」

 遠藤原は地団駄を踏みます。

「くそーっ・・・」

 隊長は寒川隊員を見て、

「よーし、差し押さえよう、証拠を!」

「はい!」

 寒川隊員は遠藤原に、

「遠藤原紀一、お前のパソコンを差し押さえる! 部屋を開けろ!」

「はぁ、何言ってるんだ、お前!?」

 寒川隊員はA4の紙片を遠藤原に突き出し、

「お前のパソコンの中には、これを書いた痕跡があるはずだ」

 隊長。

「お前ら、こすいからなあ。初期化フォーマットするか、物理的に破壊する可能性があるからな、パソコンのハードディスクを。その前に差し押さえておかないと!」

「けっ、嫌だね! 誰が入れてやるもんか、オレの部屋に! だいたいオレが拒否すれば、たとえ警官の命令であっても、入れなくてもいいんだろ!?」

 隊長。

「ふ、そんなの、裁判所の令状があれば、な~んの問題もないだろ?」

 隊長は自分の胸に付いてる小さな機械を指差し、

「お前、これ、なんだか知ってんか? これ、カメラなんだぜ! ボディカメラ! 現場の状況をリアルタイムで送るカメラだ!

 これ、今作動中なんだ。もう裁判所に捜査令状の申請を出してるんじゃないかな、上は!?

 今の裁判所は必要があるとみれば、すぐに捜査令状を発行してくれるからな。24時間! しかもその令状は、すぐにパトカーにeメールで送信。うちのパトカーにもう届いてるんじゃないか?」

 隊長は寒川隊員を見て、

「おい、ちょっと見てこい!」

「はい!」

 寒川隊員は小走りにパトカーに向かいました。そしてパトカーに到達すると、助手席のドアを開け、中をのぞき込みました。すると・・・ センターコンソールの付近に1枚の紙片がありました。

 ちなみに、この紙片、たった今eメールで届いたものではなく、最初からここに置いてあったものです。もちろんニセモノです。

 寒川隊員は手を伸ばし、その紙片を取りました。そしてパトカーを降りると、頭上に真っ直ぐ手を伸ばし、手にした紙片を隊長たちに見せました。

「来てましたよーっ!」

 寒川隊員は再び小走りに。隊長に到達すると、その紙片を隊長に渡しました。

「はい!」

 隊長はその紙片を読むと、ニャッと笑いました。

「ふふ・・・」

 隊長はその紙片を読みやすいように遠藤原に突き出しました。

「ほら、捜査令状だ! お前の部屋に入らしてもらうからな!」

 遠藤原は慌てます。

「うぐぐ・・・

 嫌だね! オレの部屋に絶対入れてやらねーからな、お前ら!」

 隊長はふっと笑うと、

「ふ、ま、こういうことはよくあることだ。そんなときは・・・」

 隊長はスマホを取り出し、画面にタッチ、スマホを耳に当てました。電話として使うようです。電話の相手が出ました。

「はい、鍵の救済社です!」

「あ~ 朝早くすみません。警察です。また手伝ってもらいたいのですが?」

「わかりました!」

 電話終了。すとるすぐにワンボックス車が現れました。その横腹には「鍵の救済社」の文字が。高浜さんはそれを見て、またもや疑問が浮かびました。

「またすぐに来た? さっきのパトカーと同じ? なんでこんなに早く来ることができるんだ、ここに? すぐそこにクルマを駐めておいて、電話とともに来たのか?

 ん、電話?・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る