私の居場所 141

 日向隊員は深く考えました。私はテレストリアルガードの隊員でメガヒューマノイド。万が一宇宙人が攻めてきたら、真っ先に戦場に駆け付けないといけない立場。プロのミュージシャンになっちゃいけないような?・・・

 けど、隊長はプロになってもいいと言ってくれてた・・・

 明日真夜中のノックのメンバーとしてテレビ番組に出たら、私はもうプロのミュージシャンだ。プロのミュージシャンになれるチャンスなんて、そうめったにあるものじゃないと思う。このチャンスは逃がしちゃだめだ!

 日向隊員はそう判断すると、

「その番組に出ます、私は! 真夜中のノックのメンバーとして!」

 と宣言。と、日向隊員は横目で明石悠を見て、思いました。

「明石さんはどうするんだろ?」

 すると明石悠も、

「私も出ます!」

 と、きっぱりと宣言。日向隊員は明石悠の父親を思い出し、苦笑して思いました。

「あは、やっぱあの父親の娘だわ」

 高浜さんはニヤッと笑って、

「ふふ、わかった! じゃ、音合わせしよっか!」


 高浜さん、日向隊員、明石悠がレコーディングスタジオに戻ってきました。日向隊員はふと真土灯里を見ました。真土灯里は晴れ晴れとした表情をしてます。日向隊員は思わず質問。

「あの~ 真土さん、ほんとにテレビに出てもいいの?」

「うん! いつかは父の無念を晴らそうと思ってた。これはいいチャンスになると思う!」

 日向隊員はその堅い決意を感じました。

 千石さん、代官さん、久領さんの3人が集まってきました。この3人の前にいる高浜さん。

「実は君たちがくる前に、もうこの3人で演奏してみたんだ」

 千石さん。

「Be Catが歌ってる影像見たけど、まぁ、信じられなかったなあ。とても真土勝之あいつが作った曲とは思えない、いかにもアイドルて感じの曲だった。真土勝之あいつ、たくさんポケット持ってたんだな・・・」

 千石さんは1枚の紙を日向隊員に渡しました。

楽譜スコアに起こしておいたよ、その曲。君にはこの方が分かりやすいだろ?」

「あは、ありがとうございます!」

 明石悠はその紙をのぞき込みました。

「私、楽譜読めない・・・」

 それを聞いた日向隊員は、

「ふ、じゃ、一緒に覚えようか!?」

 日向隊員は高浜さんを見て、

「すみません。少し時間ください」

「ああ、いいよ」

 日向隊員はそこにあったドアを開け、中に入りました。明石悠も続けて入ります。


 2人が入った部屋にはグランドピアノがありました。そう、ここはピアノ用のブース。日向隊員はキーのふたを開け、

「あは、アコースティックなピアノ弾くの、いつ以来だろ?」

 明石悠はその発言に疑問を持ちました。

「え? 日向さん、ずーっとピアノ習ってたんじゃないの?」

「私のピアノの先生て3人いたんだけど、1番目と2番目の先生はアコースティクなピアノで教えてくれたんだ。でもねぇ、3人目の先生は電子ピアノが好きな人だったんだ。

 その人、元ストリートミュージシャンで、電子ピアノばかり使ってたんだ。そのせいか私にピアノを教えるときも、必ず電子ピアノを使ってたんだよ」

「へ~・・・」

 日向隊員はピアノのイスに座りました。と、足元にある3つのペダルに足が届いてません。

「あは、ペダルに足が届かない・・・ ま、いっか!」

 日向隊員はピアノのキーに右手の複数の指を使ってタッチ。

「うん、キーは合ってる!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る