私の居場所 140
高浜さんがきっぱりと発言します。
「実は今日扶桑テレビから電話があってな」
扶桑テレビとは関東のテレビ局。関東のテレビ局、つまりキー局の1つ。ここで制作される番組の大半は、日本全国で放送されます。その名を聞いて、3人はびっくり。
「ええ?・・・」
「ミュージックレッツゴー!て番組を知ってるかな?」
明石悠が応えます。
「もちろん」
続けて日向隊員も。
「音楽番組ですよね。ゴールデンタイムでやってる?」
高浜さん。
「ああ。実はその番組に出てみないか? とオファーが来たんだ」
3人はびっくり。
「ええーっ!・・・」
高浜さん。
「しかも、生放送に出て欲しいらしいんだ、明日の」
明石悠。
「明日の?」
日向隊員。
「いきなり生放送ですか?」
高浜さん。
「けどなあ・・・」
高浜さんは真土灯里を見て、
「灯里ちゃんはSpeed Bumpてバンド、知ってるよね?」
真土灯里の顔色が変わりました。
「ええ・・・」
日向隊員ははっとして思いました。
「Speed Bumpて、たしか?・・・」
高浜さん。
「明日そのバンドかミュージックレッツゴー!に出演するらしいんだ。演奏する曲はI'm for it!」
その発言に真土灯里は大きく反応しました。
「ああ・・・」
明石悠はその真土灯里の反応に疑問を持ったようです。
「ど、どうしたの、真土さん?」
日向隊員はその明石悠に気づき、はっとしました。そして人差し指を立て、自分の唇に当て、シーのポーズ。明石悠の頭の中は、さらに疑問でいっぱいになりました。
「ええ~?・・・」
日向隊員が明石悠に小声で、
「来て!」
「あ、はい」
日向隊員と明石悠はぶ厚いドアを開け、隣りの部屋に移動しました。
日向隊員が切り出しました。
「以前話したことあったよね? 真土さんのお父さん、自殺したってことを」
「ええ」
「さっきSpeed Bumpて名前を聞いて思い出した。真土さんのお父さんが作った岬クルージングて曲が盗作だって言いがかりをつけられたって話、あれ、盗作されたって曲は、Speed Bumpというアメリカのバンドの曲だったんだよ」
「ええ~?」
「曲のタイトルはI'm for it」
「明日ミュージックレッツゴー!でSpeed Bumpが歌う曲?」
日向隊員はうなずきました。明石悠。
「ひどいよ! なんでテレビ局はそのバンドの眼の前で真土さんを歌わそうとするの?
けど、そのバンド、なんで今さらテレビに出ようとしてるの? インディーズ・・・ アマチュアのバンドだったんでしょ?」
「そのバンド、元々はインディーズのバンドだったんだけど、日本で火がついてメジャーデビューしたんだ」
「ええ、日本で? 盗作問題が逆作用して日本で人気が出たってこと?」
「うん、そうみたい。アメリカでもその後I'm for itが大ヒットして、日米で大人気になったバンドなんだよ」
「そんな・・・ 真土さんのお父さんはそれで自殺したっていうのに・・・」
と、突然ドアが開きました。先ほど日向隊員と明石悠が開けたぶ厚いドアです。そこから高浜さんが現れました。
「あは、ここにいたか? 灯里ちゃんはミュージックレッツゴー!に出たいそうだ」
それを聞いて明石悠はびっくり。
「ええ!?」
「君たちはどうする?」
日向隊員は深く考えました。
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