私の居場所 93

 Aの暴言が続いてます。

「いいか、著作権協会のお偉方も作曲家協会のお偉方も、み~んな盗作しまくって偉くなったんだよ! 盗作ばっかしてた真土勝之の味方になって当然だろ!」

 もうむちゃくちゃな論理。著作権協会も作曲家協会もそんな人はいません。

 実はこの2つの協会、真土勝之は盗作してないという公式見解を発表した日から、ネット民からそう言われるようになってたのです。完全な言いがかりなのです。

 Aは指をボキボキ鳴らしながら、

「お前、少し痛い眼に遭わないとわかんねぇらしいなーっ!? ええーっ!」

 Aに迫られ焦る女性。演奏してる3人の側には複数の警官がいますが、少し離れたこの場所の異変に気づくことは不可。周りのオーディエンスも、何もすることができません。

 が、

「おーい、何やってるんだ!?」

 その声は5人の背後から。Aは思わず振り返ります。

「なんじゃお前ーっ!」

 するとそこにいたのは格闘家の土屋翔介でした。今日本で一番強い格闘家と言われてる人物です。もちろんみんなに知られてる人。Aも知ってたようで、ビビリ始めました。

「うっ、つ、土屋翔介?・・・」

 BがAに話しかけました。

「おい、行こうぜ!」

「ああ・・・」

 5人は今来た方向に歩き始めました。その背後から罵声が飛んできました。

「おーい、弱い者にはすごむクセに、強い者にはしっぽ巻いて逃げんのかよーっ!?」

「2度と来んなよ、このうんこ野郎ーっ!」

 歯を喰いしばり両手に拳を作って耐えるA。

「くそーっ!・・・」

 5人は行ってしまいました。Aににらまれた女性が土屋翔介に、

「どうもすみません」

「まあ、いいってことよ!」

 土屋翔介は演奏中の3人を見て、

「しかし、すごいテクニックだなあ! ほんとうにJCなのか、あのたち?」

 ちなみに、日向隊員の人工脊髄反射のデータの1つは土屋翔介のもの。まさか自分から採集されたデータを持ってる人物が今眼の前にいるとは、夢にも思ってないはず。


 ここはデパートの2階のテラス。3人から少し離れたところですが、ここにも3人の演奏を観覧してる人が何人かいます。その中に長身で白いワンピースを着て白い帽子を被った女性がいます。女神隊員です。女神隊員の眼は明石悠を捉えてました。


 さて、演奏してる3人組ですが、真土灯里は相変わらず華麗なギターテクニックを披露してます。それを電子ピアノを弾きながら横目で見てる日向隊員、

「あは、やっぱ真土さんのギターテクはすごいや」

 とつぶやきました。

 実は3人がここで演奏するのは、今日が3日連続3日目。

 初日日向隊員はギターを弾いてました。そう、真土灯里モデル。けど、真土灯里の横でギターを弾いてると、彼女のあまりにも人離れしたギターテクニックの前に自分のギターが埋もれてしまったのです。

 その夜日向隊員は悩みました。どうすれば真土さんのギターに負けないで演奏することができる? 考え抜いた末、少し前まで習ってたピアノを使うことにしました。

 今の日向隊員の目標はエレキギターを完璧に覚えること。だからピアノなんか弾いてるヒマはないのですが、ライヴではそんなこと言ってられません。2日目から電子ピアノを持ちこむようになりました。

 真土灯里は日向隊員の電子ピアノにあまり興味を示しませんでしたが、実際演奏を始めてみるとびっくり。

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