私の居場所 60
老松かよは怒鳴り散らします。
「お前たちもなんだ、いったい!? 明石悠を知らないなんて、よくも抜かしやがったな!」
老松かよはぐったりとしてしまった啓一をちらっと見て、
「こいつと口裏を合わせて、くだらないウソばかりつきやがってなぁ! そこまでして私をバカにしたいのかよ、ええ!?」
モヒカンの男とリーゼントの男は頭を低くして応えます。
「そ、そんなことないっすよ!」
「オレたちゃ、姐さんをバカにしてませんって!」
「ともかく明石悠と日向愛をぶっ殺してこい! そうしたら許してやるよ! もしできなかったら全員破門だ! お前らを捜し出して、ギッタギッタにしてやるからな! 覚えてろよ!」
ここはマンションらしき建物の外廊下。深夜なせいか、外は真っ暗。雑音もありません。
今ドアが1つ開き、モヒカンの男とリーゼントの男。その2人に挟まれるように肩を借りた啓一が出てきました。
啓一の顔面は無残な状態。どこが鼻でどこが口かわからないほどぐちゃぐちゃ。はぁはぁと微かな息が聞こえてきます。
3人がエレベーターの扉の前に着きました。モヒカンの男がボタンを押します。しばらくして引き分けの扉が開きました。3人がエレベーターの中に入りました。
下降中のエレベーターのケージの中、モヒカンの男が啓一に話しかけます。
「坊ちゃん、もう少しですよ。気を確かに」
1階エントランス。エレベーターの扉が開き、3人が降りました。そのまま玄関の自動ドアへ。
玄関の前には1960年代の意味なくでかいアメリカ製のクルマが待ってました。その運転席のドアの前には、深夜なのに濃いサングラスをかけた男が立ってました。
サングラスの男は啓一のぐちゃぐちゃになった顔面を見て、
「うわ、こいつはひでぇ・・・」
3人は後部座席のドアを開け、中に入りました。サングラスの男は運転席のドアを開け、車内に入りました。
年代物のクルマが走り出しました。
車内。サングラスの男はルームバックミラーで後ろを見て、
「その人、もしかして啓一さん?」
モヒカンの男が応えます。
「ああ」
「誰にやられたんですか?」
今度はリーゼントの男が応えます。
「姐さん・・・」
それを聞いてサングラスの男はびっくり。
「ええーっ!? 姐さんて・・・ 実の母親にやられたんですか?」
モヒカンの男。
「ああ・・・」
「なんで?」
モヒカンの男。
「それがなあ・・・ まったくわけがわからないんだ・・・」
サングラスの男はハンドルを握ったまま唖然。
「ええ?・・・」
リーゼントの男はサングラスの男に質問。
「あんた、明石悠て女、知ってんか?」
「ええ、もちろん!」
モヒカンの男も質問。
「日向愛は?」
「もちろん知ってますよ!」
リーゼントの男。
「だ、誰なんだよ、その2人?」
その質問にサングラスの男はびっくり。
「ええ~?・・・」
モヒカンの男。
「姐さんはその2人を殺してこいと命令してるんだけど、誰なんだかぜんぜんわからないんだ・・・」
「ああ・・・ いいですか? その指令、2回目ですよ。
姐さんから緊急招集がかかりましたよね、昨日・・・ いや、
モヒカンの男。
「ああ、そんなこと、あったような?・・・」
「そこで姐さんはJCを2人殺して来いと指令を出したんですよ、みんなに。その2人が明石悠と日向愛ですよ」
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