私の居場所 56

 3人の前には1つの人影があります。男か女かさえわからないほどの不鮮明な影ですが、声からして男のようです。

「いいですか? あなたたち3人はこれからクラクションを聞きます。それを合図にあなたたちは目覚めます。

 何があったのか、あなたたちは何一つ覚えてません。むりに思い出そうとすれば、あなたたちはひどい災難に見舞われます。

 まもなくクラクションが鳴ります」


 果てしなく延びるフェンス。フェンスの向こうは広大な滑走路。そう、テレストリアルガード基地。フェンスの手前は街道。今ここを1台のクルマが走ってます。隊長が私用で使ってるクルマです。

 その車内、私服の隊長がハンドルを握ってます。隊長以外人は乗ってません。

 フロントガラスの向こうにバス停が見えてきました。

「む、あれだな」

 バス停のベンチに3人が座ってます。啓一、モヒカンの男、リーゼントの男です。3人は真っ白い空間の中にいたときとまったく同じ姿勢で眠ってます。

 隊長のクルマは徐行。そして・・・

 ビー! けたたましいクラクション。3人ははっとして目覚めました。

「ひーっ!・・・」

 走り去る隊長のクルマ。ハンドルを握ってる隊長は、ルームミラーで背後を確認します。

「ふ、目覚めたか。

 しかし、公安7課は甘いなあ。オレだったら即刻処分しちまうんだけどな、3人とも。いつもは人権無視の公安がこんなところで遵法精神なんて・・・

 あの3人を生かしておくと、あとあと面倒なことになるような気がしてならないんだが・・・」


 ベンチで目覚めた3人はあたりをキョロキョロ。啓一。

「な、なんだよ、ここは?」

 リーゼントの男は立ち上がり、テレストリアルガード基地を見ました。

「テレストリアルガード基地? なんでオレたち、こんなとこにいるんだ?」

 モヒカンの男は頭を抱え、

「何があったんだか、ぜんぜん思い出せない・・・」

 と、突然3人の前に何か巨大なものが現れました。怯える3人。

「ひっ!?・・・」

 それはたった今眼の前に停車した路線バスでした。啓一はそれを見て、

「バ、バス?・・・」

 啓一はバス停の標識に気づきました。

「ここはバス停なのか?・・・」

 バスは扉を開けます。リーゼントの男は啓一を見て、

「ぼっちゃん、どうします?」

「あ? ああ・・・ 乗るか?」

 3人はバスに乗り込みました。


 バスの座席で揺られている3人は、狐につままれたような雰囲気。と、窓の外に日向隊員の建物とされている住宅が見えてきました。が、3人はその建物にまったく興味を示しません。

 バスはそのまま素通りしていきました。


 陽は傾いてきました。ここはいつもの総合病院。駐車場に隊長が私用に使ってるクルマが駐車しました。運転席のドアが開き、私服の隊長が降りました。


 自動ドアが開き、隊長が入ってきました。ここは病院の受付。夕方のせいかあまり人はいませんが、それでもある程度の人影があります。隊長はその中を通り、エレベーターの扉の前へ。いや、ここは通り過ぎました。

 そのまま奥へと歩き続ける隊長。いつの間にか廊下から人気ひとけが消えました。隊長はエレベーターの扉の前に立ちました。そしてボタンに触れました。

 エレベーターの扉が開きました。隊長は乗り込みます。


 エレベーターの中、隊長が押したボタンはB1と2の2つ。ちなみに、ボタンはB1・1・2・3・4と5つあります。ボタンの上にはデジタルの表示板があります。

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