私の居場所 57
エレベーターの中、隊長が押したボタンはB1と2の2つ。ちなみに、ボタンはB1・1・2・3・4と5つあります。ボタンの上にはデジタルの表示板があります。
隊長が長目に2つのボタンを押してると、デジタル表示はB2になりました。そう、ボタンにはない階です。扉が閉まり、エレベーターが降下し始めました。
エレベーターの扉が開きました。ここは地下2階。エレベーターを降りた隊長は、再び廊下を歩きます。廊下にはいかにも病院と言った感じの機材が無造作に置いてありますが、人影はまったくありません。
隊長は重たそうな扉の前に立ち、ハンドル型のドアノブを握り、捻りました。
ドアが開き、隊長が入ってきました。この室内の3方は壁。1方はガラス窓になってます。窓の向こうにはCTスキャンがあります。
隊長が入った部屋は、このCTスキャンのモニター室のようです。ガラス窓の下にはいくつものモニター機器が並んでました。
隊長がこの部屋にいる3人を横目で見ました。3人は白衣を着てるところを見ると、医師のようです。その中の隊長から見てもっとも遠くにいる人物の顔色は、著しく青ざめてました。
隊長がCTスキャンを見ると、日向隊員の頭部がありました。そう、首から上だけ。左側側頭部の巨大なガーゼが痛々しく見えます。隊長は思いました。
「おいおい、あれを見たくらいで気分を害したのかぁ、こいつ? オレはふわふわ空中を移動してるあいつの生首を何度も何度も見せられてるんだぞ」
日向隊員は瞬き。瞳を動かします。これがモニター機器のディスプレイに映りました。その瞬間、ぐふぉ! その医師はついに両手で口を押さえ、慌ててドアを開け、部屋を出て行きました。隊長はそれを横目で見て、
「あいつ、絶対向いてないな、医者には。だめだ」
隊長は一番近くにいた医師に質問しました。
「彼女、どんな調子ですか?」
「脳波に異常はありませんでした。今は頭蓋骨の骨折を診てますが、まあ、たぶん問題はないと思います」
「う~ん、出血は? 私が駆け付けたとき、かなり出血してましたが?」
「頭部には血管が集中してますからねぇ。擦過傷を負ったとき、動脈を損傷したようです。けど、安心してください。もう血は完全に止まってます」
隊長は笑顔を見せ、
「ふふ、そっか」
部屋が変わってここは処置室。背もたれのあるイスに検査着姿の少女の身体が座ってます。日向隊員の身体です。頭部はありません。
今彼女の身体の後ろに1人の医師がいます。医師は両手で日向隊員の首を持ってます。日向隊員の眼はぱっちりと開いてます。
「じゃ、行くよ!」
医師が少女の身体の切断面に日向隊員の首を押し当てます。まず1時30分の方向に首を置き、左に45度回転。カチッ! 首が据わりました。
この一連の動作を見守ってた隊長が、医師に質問。
「これで終わりですか?」
「いや、包帯を直したいので、もう少し待ってもらえますか?」
「わかりました」
医師は近くにいた女性看護師を見て、
「おい!」
「はい!」
看護師は日向隊員の包帯に手をかけました。と、日向隊員は口を開きました。
「あ・・・ なんか気分が悪いなあ・・・」
隊長が反応します。
「ん、どうした? 金属バットで殴られたときの話をしてんのか?」
「それもありますけど・・・」
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