私の居場所 53

 そう、日向隊員の首は胴体から分離させることが可能なのです。その上、万が一強い負荷が頭部にかかった場合は、自動的に首がはずれる機能もついてました。

 けど、そんなこと、啓一も、リーゼントの男も、モヒカンの男も知りません。もちろん明石悠も。4人は同時に驚きの声をあげました。

「えーっ!?」

「このーっ!」

 その日向隊員の掛け声とともに、立ちぱなしだった日向隊員の首なしの身体は、啓一の身体に突進。啓一を殴る気です。焦る啓一。

「ひーっ!・・・」

 けど、眼と胴体はかなり離れてます。日向隊員の身体は目測を誤り、啓一の身体とはかなり離れた位置で拳を振るいました。当然空振り。そのままバランスを失い、ぐしゃっと転倒。悔しがる日向隊員。

「くっそーっ、はずしたーっ!」

 焦る啓一。

「なんなんだよ、こいつは!?」

 啓一は振り返り、慌てて逃亡。

「くそーっ、こんなの、やってられんかよーっ!」

 モヒカンの男とリーゼントの男も啓一を追い駆けます。

「待ってくださいよーっ!」

 首だけになってる日向隊員は、それを見てさらに激怒。

「こらーっ、逃げんなーっ!」

 と、その後頭部から何かが駆けだす音が。びっくりする日向隊員。

「へっ?・・・」

 首のない日向隊員の胴体が立ち上がり、自分の首の髪の毛をむんずと掴み、顔面を背後に向けました。するとなんと、明石悠は逃走してました。

「ええーっ!?・・・」

 日向隊員の胴体は明石悠に向かって駆け出しました。右手を真っ直ぐ前に突き出し、手に持った頭部を明石悠に向けてます。その顔は叫んでます。

「もう! なんで逃げんのよーっ!?」

 必死に駆ける明石悠。

「こ、こないでーっ!」

 当たり前です。今の日向隊員はどう見てもバケモノ。明石悠は逃げて当然なのです。

 一方日向隊員は悔しさでいっぱい。誰も仲間がいなく、その上不良どもから毎日毎日金を巻き上げられ、レイプされていたかわいそうな明石悠を救おうとしてるのに、当の彼女が逃げ出すなんて・・・

 いや、だから、今のはあなたはどう見てもバケモノなんですよ! 逃げて当然なんです!

 メガヒューマノイドの日向隊員の足は速く、すぐに明石悠に追いつきました。日向隊員の左手が明石悠の肩を掴みました。

「待ってよーっ!」

 すると明石悠はバランスを失い、うつ伏せに転倒。

「きゃーっ!」

 その状態で振り返ると、そこには日向隊員の頭部が。どアップです。明石悠は再び悲鳴を上げます。

「や、やめてーっ!」

 怒る日向隊員。

「なんでよ!? あなた、私がメガヒューマノイドて知ってんでしょ!?

 いい!? メガヒューマノイドて身体中が機械化されていて、みんな、首が自由にはずれるようになってんのよ!」

 この発言はウソ。日向隊員は「みんな」と言ってましたが、この時点でメガヒューマノイドは(テレストリアルガード内では)2人しかいません。そう、日向隊員と黒部すみれ隊員。しかも黒部すみれ隊員は首をはずすことはできません。

 けど、明石悠は納得したようです。

「ご、ごめんなさい・・・」

 日向隊員は安心顔。

「ふ、やっとわかってくれたようね」

 日向隊員は自分の首を両手で挟むように持ち、顔面を1時半の方向へ向け、首の切断面を身体のその部分にピタッと合わせます。そして12時の方向へ回転。カチッ! 首が据わりました。安心したのか、日向隊員はため息。

「ふーっ・・・」

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