私の居場所 52

 と、日向隊員は何かを感じたようです。

「ん、曲がった? え、1人だけ?」

 どうやら3人のうち1人だけが、このこみちへと曲がったようです。

 と、今度は、ボキッ 小枝を踏む音が。その音に日向隊員ははっとしました。その音は雑木林の中から聞こえてきました。

「林の中に誰かいる?・・・」

 ここで日向隊員は昨日の隊長のセリフを思い出しました。

「そういや明日からお前にボディガードが付くらしいぞ。公安7課が付けるそうだ。だがなぁ・・・ なんでも秘密裏に行動するからなあ、やつら。どこからどういう形で守ってくれるのか、さっぱりわからないんだ。それは気に留めておいてくれ」

「そっか、公安7課の人だな、この気配」

 明石悠はボーとしてる日向隊員を再び不審に思い、

「日向さん、どうしたんですか、さっきからいったい?」

 日向隊員は慌てて作り笑い。

「あは、なんでもないよ」

 ここで、ボキッ! 再び小枝を踏み音。今度はさらに大きな音。日向隊員はその音を聞いて、その音が聞こえてきた雑木林に振り向きました。

「違う、この音は公安7課じゃない?・・・」

 そのとき、

「きゃーっ!」

 突然の悲鳴。

「ええ!?」

 日向隊員は慌ててその声の方向を見ました。すると明石悠が男に羽交い絞めされてました。リーゼントの男です。慌てる日向隊員。

「明石さん1?」

 リーゼントの男はニターッと笑います。

「へへへ、この、間抜け! よそ見ばかりしやがって!」

 ほぞを噛む日向隊員。

「くっ・・・」

 日向隊員は雑木林から聞こえてくる音に集中し過ぎて、真後ろから追ってきた男の監視がおろそかになっていたのです。さらに、

「おい!」

 日向隊員がはっとして振り返ると、そこには啓一とモヒカンの男が立ってました。この2人、どうやら雑木林から現れたようです。啓一は金属バットを持ってます。その啓一が気持ち悪い笑顔で、

「あのときはよくもやってくれたなあ、おい!」

 と怒鳴りました。その瞬間日向隊員は思い出しました。明石悠にたかる4人組の不良を。日向隊員はその4人組をあっという間に撃退したのですが、そのとき日向隊員と組み合わなかった男が1人いました。それがこの男だったのです。

「こいつ、あのときの・・・」

 啓一は金属バットの先っぽを日向隊員に向け、

「ぶっ殺してやる!」

 殺意マンマン。明石悠はそれに気づき、思わず叫びます。

「日向さん、逃げてーっ!」

 リーゼントの男はその明石悠の口をてのひらでふさぎます。

「うるせーんだよ、おい!」

 なのに当の日向隊員はフリーズしてました。突然の出来事に頭の情報処理がついていけなくなってしまったのです。

 啓一は1歩2歩日向隊員に近づいていきます。

「いや、殺す前に輪姦まわしてやるか。殺すのはそれからだな。へへへ」

 通常右利きがバットを振るときは半身になり、左腕を手前に振りますが、啓一の今の目的はレイプ。殺してはレイプできません。少々弱目に金属バットでいたぶるつもりです。

 啓一は右手だけでバットを握り、左手側から右手側に水平にバットを振りました。それが日向隊員の右側頭部に激突。明石悠は唖然。

「ああ・・・」

 すると日向隊員の首は胴体から離れました。明石悠は叫びます。

「いやーっ!・・・」

 日向隊員の切断された首はアスファルトへ落下。1バウンド。そのまま無残に転がりました。それを見てモヒカンの男はびっくり。

「ええ、首チョンパ?・・・」

 リーゼントの男も焦りました。

「マ、マミった?・・・」

 次の瞬間、怒鳴り声が。

「いったーっ! くっそーっ、よくもやったなあーっ!」

 なんとアスファルトに横になった日向隊員の首が怒鳴り声をあげたのです。

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