私の居場所 50

 この曲を聴いて明石悠はびっくり。スピード感あふれるものすごくかっこいい曲だったのです。

「ふわ~・・・」

 日向隊員はその明石悠の腕の黒い肌を見て、あることに気づきました。

「あは、そっかあ! あなた、3年前は外国にいたんでしょ?」

「え?・・・ あ、はい!」

「ふ、なるほどね。それで初めて聴いた曲っていうわけね。いろんな音楽賞を総なめしたのよ、この曲は!」

 曲が間奏になりました。ギタリストのソロプレイ。素人しろうとが聴いてもすごいソロプレイです。明石悠はまたもや感嘆の声をあげました。

「うわ~ す、すっごーい・・・」

 日向隊員は逆に苦笑い。

「あは、こんなすごいギターテク、私には絶対ムリだよ。私はアコースティックギター、向こうはエレキギターだから、この間奏部分は省こっかな?・・・」

 明石悠は日向隊員に質問。

「このバンド、今は?」

 日向隊員はモニターの中でギターを弾いてる男性を見て、

「2年前かな? 死んだんだよ、この人・・・」

 それを聞いて明石悠はびっくり。

「ええ?・・・」

「それを機にこのバンドは解散したんだよ。あ、活動を停止したと言った方がいいかな? ま、2人しかいないバンドだったんだけどね」

「なんで死んだんですか?」

「自殺」

「ええ~?」

 日向隊員はモニターの中のギタリストを見て、

「この人、名前なんていったかなあ?・・・

 この人、このバンドの曲をすべて作曲してたんだけど、この曲の大ヒットで音楽業界から俄然注目されるようになったんだよ。

 さっそくある女性アイドルグループのデビュープロジェクトに呼ばれて曲を書くことになったんだけど、その曲は盗作だって噂が立ってね・・・ フランスで活動してるバンドにそっくりな曲があったんだ」

「盗作?・・・」

「私も聴き比べたんだけどねぇ・・・ 似てると言われたら、まぁ似てるかなあ?て感じだったんだけど、ネットでは彼を徹底的に叩いたんだ。完全に成功者に対するやっかみだったよ。

 その事件に絡んで、そのギタリストさんの娘さんが学校でイジメられて、大ケガをする事件があったんだ。

 そのギタリストさんは怒りのあまり数人のバンド仲間をつれて大ケガをさせた子どもの家に乗り込んでいったんだ。けどねぇ、その父親は半グレで、謝るどころか逆切れして、短刀を持ちだして大暴れしたんだ。

 何人もの人が斬られ、2人が死亡。ギタリストさんを含め数人が大けがを負ってしまったんだ。なんか、指を数本斬り落とされたみたい、そのギタリストさん」

「え、ギタリストなのに?・・・」

「うん。世間ではギタリストさんに同情的だったんたけど、ネットの世界ではさらに彼を叩いたんだ。

 お前が余計なことしたから2人が死んだんだ! お前も殺されればよかったんだ! ギタリスト廃業おめでとうございます! て感じでね。

 それを見たギタリストさんはショックのあまり、そのまま病室の窓から飛び降りたんだ。自分としても、2人斬り殺されたことにかなりショックを受けてたみたい」

 明石悠は唖然。

「ひ、ひどい・・・」

「ネットなんかこんなものだよ。あんなの、なくなっちまえばいいのに・・・

 さあ、覚えよっか、この曲を!」

「うん!」

 2人はHoleや旅路と同じプロセスでundercoveという曲を覚えました。こうして1時間とちょっとで2人は3曲を覚えました。

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