私の居場所 49
プリンターから1枚の紙が出てきました。日向隊員はその紙を取ると、それを明石悠に渡しました。
「はい」
明石悠がその紙を見ると、Holeという曲の歌詞でした。明石悠は日向隊員に、
「ありがと」
日向隊員はギターを弾く体勢に。
「じゃ、行くよ!」
が、
「ちょ、ちょっと待って!」
明石悠は止めました。ギターを弾く寸前だった日向隊員はへっ!? という感じになりました。明石悠は言葉を続けます。
「もう1回見せてよ、映像を。お願い!」
すると日向隊員の顔はすぐに温和になりました。
「ふ、OK!」
そう、音楽センス抜群な日向隊員なら1度聴いただけでその曲を覚えることができますが、今まであまり音楽に接してなかった明石悠だと、1度聴いただけじゃ曲を覚えることはできないのです。
結局明石悠はHoleの映像をあと3回見ました。特に3回目の時は、映像に合わせこの曲を歌ってました。日向隊員はそれを見てにや笑い。
「ふふ、やる気まんまんじゃん!」
日向隊員は再びギターを弾く体勢になりました。
「じゃ、行くよ!」
明石悠は今度は肯定的に応えます。
「うん!」
ジャーン! 日向隊員はギターをかき鳴らしました。昨日は歌い出すタイミングがわからずなかなか歌い出すことができなかった明石悠ですが、今日はちゃんと歌い出すことができました。日向隊員はそれに気づき、
「ふふ、今日はちゃんと歌い出すことができた。馴れてきたわね、悠!」
けど、まだ完全にメロディを憶えきれてなかったようです。ところどころ「あれ?」て感じなところがありました。
明石悠は曲を歌い終えました。日向隊員は質問。
「どう?」
明石悠は応えます。
「お願い、もう1回歌わせて! あ、その前にもう1回映像見たい!」
日向隊員は心の中で「ふふ」と笑うと、
「了解!」
と応えました。
明石悠は再びHoleの映像を見ました。映像に合わせHoleを歌いました。さらにそれをもう1回。そして日向隊員を見て、
「OK、もう歌えるよ、絶対!」
日向隊員はギター構え、
「じゃ行くよ!」
ジャーン! 日向隊員はまたギターを鳴らしました。歌い始める明石悠。今度はちゃんと歌ってます。日向隊員はギターを弾きながら思いました。
「ふふ、今度はきちんと歌ってるよ」
こうして明石悠はHoleという曲を完璧にマスターしました。
続けて憶える曲は、セパレートウェイズの旅路。2人はこの曲もHoleとまったく同じプロセスで憶えました。なお、日向隊員はこの曲も知らなかったようです。
最後に覚える曲は、真夜中のノックのundercover。日向隊員はパソコンのマウスを操作しながら、ぽつり。
「ふ、やっと知ってる曲が出てきたよ」
それを聞いた明石悠は、
「日向さん、知ってるんですか、この曲?」
と質問。途端に日向隊員の顔は驚きに変わりました。
「ええ、何言ってんの? 明石さん、この曲知らないの? これ、3年前に大ヒットした曲だよ!?」
今度は明石悠が慌てます。
「ええ? ああ、そ、そうでしたね・・・」
日向隊員はその返答に違和感を覚えました。
パソコンのモニターの中は動画投稿サイト。undercoverという曲が始まりました。演奏してるバンドは真夜中のノック。と言っても、画面の中はヴォーカルとギタリストだけ。どうやら2人だけのバンドのようです。
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