私の居場所 51

 日向隊員は明石悠に話しかけました。

「今日はこのへんにしようか?」

「うん!」

「じゃ、またタクシー呼ぶよ」

「ええ、それはちょっと・・・」

「ええ、なんで? あなた、悪いやつらに狙われてるんだよ。徒歩で帰ったら危ないって」

「で、でも・・・

 ほんとうのこと言うと、私の家、昨日は歩いて30分かかると言ったけど、ほんとうは10分くらいのところにあるんだ。だから今日は歩いて帰ります」

「あは、そうなんだ。じゃ、私があなたの家まで送っていくよ」

 明石悠は唖然。

「え~・・・」

 明石悠はあまり日向隊員に迷惑をかけたくありません。けど、もう断ることはできなくなったようです。2人は日向隊員の家とされてる住宅を出発しました。


 2人は街道沿いの歩道を歩いてます。2人の背後には日向隊員の家とされてる住宅が見えます。

 明石悠が話しかけました。

「日向さん、あ、あの~・・・」

「ん、何?」

「日向さんは最終的に何をしたいんですか?」

「ん? あー、プロデビューしたいなあ、2人で」

「ええ・・・ テレストリアルガードの隊員ですよねぇ、日向さんて? それでプロデビューできるんですか?」

「あは、どうだろう? 隊長は許してくれるかなあ?・・・」

 日向隊員は黒部すみれ隊員を思い浮かべ、心の中でつぶやきました。

「すみれさんはリハビリていうことで音楽活動を許してたからなあ。私はどこまで許してくれるんだろ?・・・」

 と、明石悠は突然吐露しました。

「私、怖い・・・」

「え、なんで?」

「みんなに注目されるなんて、なんか怖い・・・」

 日向隊員は考えました。明石悠は連日恐喝され、その金額は1億円をはるかに超えてました。さらに毎日毎日集団レイプ。これですべての人に心を許すなんてとうていムリです。

 けど、日向隊員だって考えてます。明石悠に元の自信を回復させるために、そしてみんなにいい意味で注目されるようにするために、今日中学校の校門の前で歌わせました。

 明日も明後日も、毎日毎日校門の前で歌えば、きっと自信は戻って来るはずだし、みんなから注目されるはず・・・

 日向隊員は明石悠を見て、

「ふふ、大丈夫大丈夫。私があなたを守るから、明日も校門の前で歌いましょ!」

 日向隊員は再び考えました。

「けど、人気が出たら、その先はどうするつもりなの、私? う~ん・・・」

 と、日向隊員はここでふと何かを感じ、振り返りました。

「ん?」

 そこには3つの人影が見えました。と言っても、かなりの後方。3つの人影はかろうじて人とわかる程度。けど、超能力のある日向隊員は感じてました。あの3人、私たちを監視してる?・・・

 明石悠は後ろに気を取られてる日向隊員に気づき、不審に思いました。で、質問。

「日向さん、どうしたの?」

 日向隊員は作り笑い。

「あは、なんでもないよ」

 ここで2人はT字路に差しかかりました。昨日通ったこみちよりさらに細いこみちです。クルマの進入を防ぐためか、こみちの入り口のど真ん中には、高さ1mほどの杭(車止め)が設置されてます。

 明石悠はそのこみちを見ました。

「私の家、こっち」

「了解!」

 2人はこみちへと曲がりました。

 明石悠は日向隊員にいろいろと語りかけてますが、日向隊員の心は別のところにありました。そう、後ろをつけて来る3人組を全感覚を使って監視してるのです。

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