私の居場所 41

 傾聴してた宮山隊員は悔しそう。

「なんなの、2人とも急に声を小さくして? くーっ、なんて言ってんだろ?・・・」

 隊長の発言が続きます。

「お前が見た夢の通り、閉鎖されたばかりの町工場に不良どもが集合してたそうだ。さっき少年課の四之宮て警部がこの基地に来て、いろいろと説明してくれたよ」

「全員逮捕されたんですか?」

「それがなあ・・・ 不良は80人以上も集まってたらしい」

「ええ、そんなに!?」

「ああ。しかも金属バットや金属製のパイプで武装してたらしい、全員がな。少年課も機動隊員を連れて行ったそうだが、30人しか連れて行かなかったそうだ」

「ええ、じゃ?・・・」

「ああ、1人も逮捕できなかったらしい。ただ、首謀者が誰だかわかったみたいだぞ」

 隊長は1枚の写真を取り出し、それをテーブルにポンと置きました。

「機動隊員のボディカメラには、この女が映ってたそうだ」

 その写真には1人の中年女性が写ってました。たくさんの不良を束ね、機動隊員を一蹴してしまったあの中年女性です。日向隊員はその写真を見て、

「誰ですか、この人?」

「老松かよ。半グレの親分だ」

「不良のリーダー?」

「まあ、そんなとこだな。

 この女、最初に逮捕されたときの年齢は12歳だったそうだ」

「ええ、今の私と同じ年齢?」

「ああ、そうだな。15歳のときに地元の暴走族の総長となり、周りの暴走族を次々と傘下に収め、17歳で関東一の暴走族の総長となったそうだ。さらに半グレグループを結成し、違法薬物の販売や児童買春の斡旋とやりたい放題だったそうだ。

 何回も何回もお縄になってて、人生の2/3は少年院か刑務所で暮らしてたらしい、筋金入りのワルなんだよ」

「へ~・・・ けど、なんでそんな人が私を?」

「お前が撃退した4人組の中に、お前と闘わずに逃げ出したやつがいたろ?」

「ええ、いました」

 隊長は写真を持ち、それを日向隊員に見せ、

「こいつの息子だったらしいな、そいつ」

「ええ~・・・」

「こっからは四之宮警部の推測だが、この女、とってもプライドが高いやつなんだそうだ。なのに息子はお前と闘わずに逃げ出した。そのせいであいつのプライドはズタズタに引き裂かれてしまった。

 そこでお前を半殺しにする計画を立てた。いや、殺すつもりだったのかもしれないな。

 お前、金属バットや金属製のパイプを持った80人の不良に襲われたら、どうする?」

「あは、メガヒューマノイドに変身してたら飛んで逃げるけど、この格好じゃ、どうしようもならないですね」

「ふふ、まぁ、そうだろうな。便利だな、お前の正夢は。事前に最悪な事態を察知することができるんだからな。

 あ、そういや明日からお前にボディガードが付くらしいぞ」

「ええ?」

「公安7課が付けるそうだ。だがなぁ・・・ なんでも秘密裏に行動するからなあ、やつら。どこからどういう形で守ってくれるのか、さっぱりわからないんだ。それは気に留めておいてくれ」

 日向隊員は苦笑。

「あは、わかりました」

「まあ、うちらもいろいろとお前を守るつもりだ。公安7課あいつらだけじゃ心許こころもとないからな」

「あは、頼もしいです!」


 夕方、かなり陽が傾いてます。ここはちょっとくたびれたビル。窓に西陽が反射してます。

 その外廊下を1人の配達員が歩いてます。配達員は巨大なピザの容器を両手で持ってます。

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