私の居場所 42

 配達員はあるドアの前で停止。ピンポーン! 呼び鈴を押し、

「コンフィデンスピザです! ピザをお届けに来ました!」

 の呼び声。すると中から、

「はーい!」

 の声。ドアが開き、モヒカンの男が出てきました。そう、元町工場に集合していた不良の1人です。

 モヒカンの男は1枚の長細い茶封筒を配達員を配達員に見せます。

「じゃ、これで!」

 配達員はピザの容器をモヒカンの男に渡し、と同時に茶封筒を受け取りました。そして茶封筒の中身を確認し、すぐに笑顔に。

「はい、確かに!」

 配達員はドアを閉めながら、

「またのご注文をお待ちしてます!」

 ドアが完全に閉まりました。モヒカンの男は振り返ると、ピザの容器を持ってパタパタと歩きます。そして引き戸を開け、部屋の中に入りました。


 部屋の中には、元町工場の中ではモヒカンの男と一緒にいたリーゼントの男と首謀者の老松かよがいました。モヒカンの男は老松かよにピザの容器を見せ、

「姐さん、ピザが届きましたよ!」

「よこしな!」

 老松かよはピザの容器を奪うように取ると、中身を開けました。そして中のピザの1片を取ると、

「あ~ん!」

 と丸かじり。それを唖然として見ているモヒカンの男とリーゼントの男。老松かよはその視線に気づき、2人をギロっとにらんで、

「なんだよ!? 文句あんのかよ、ええ!?」

 2人は慌てます。

「い、いいえ、なんでもありませんよ・・・」

 老松かよは、

「ふん!」

 と言うと、再びピザにかぶりつきました。しばらくして老松かよはため息。

「は~ しかし、気分が悪いなあ。誰だい、警察にチクッたヤツは!?」

 2人の男はそれを聞いて苦笑。そして思いました。

「そりゃあ、姐さん、あれだけたくさんの兵隊に招集をかけたら、絶対どこからか情報が漏れますよ・・・」

 ま、実際通報したのはテレストリアルガード作戦部門の香川隊長。日向隊員の正夢を元に通報したのですが。

 と、老松かよはふと何かを思い出しました。

「うん? そういや、啓一はいつになったら帰ってくるんだ?」

 リーゼントの男も頭を傾け、

「おぼっちゃんですか? そう言えば帰ってきませんねぇ・・・」

 どうやら啓一とは、町工場の中で老松かよにボコボコに殴られていた彼女の息子のようです。

 老松かよは思い出します。

「う~ん・・・」


 これは30分くらい前の出来事。場所は同じ部屋。啓一の顔面を思いっきり殴る老松かよ。

「うぎょーっ!」

 床に転がる啓一。啓一は涙声で、

「か、母ちゃん、もう殴んないでくれよ~!」

 吐き捨てる老松かよ。

「うるせーっ!」

 老松かよは啓一の腹を蹴ります。悲鳴を上げる啓一。

「ぐふぉーっ!」

 モヒカンの男とリーゼントの男はびびりまくり、

「ひ~・・・」

 老松かよは啓一の前にデーンと立ち、

「悔しかったらあの女を殺してきな! そうしたら許してやるよ! お前はまだ14歳なんだ。何人殺しても数年で娑婆しゃばに出てこられるだよ! 安心して殺してこい!」

 啓一の顔は悔しさいっぱい。涙がにじみ出てます。と、啓一はよろよろと立ち上がりました。そのまま引き戸に向かっていきます。モヒカンの男とリーゼントの男はそれを見て、

「ぼ、ぼっちゃん・・・」

 啓一は引き戸を開け、部屋を出ていきました。一方老松かよは缶チューハイをブシューッと開け、それを一気呑みしました。

「くふぁーっ!」

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