私の居場所 40

 隊長は横目でテレビを見ました。壁に設置された巨大なモニターです。

「県議会議員の娘だったみたいだな、生徒会長は。今父親がテレビに出てんよ」

 テレビの中では今スーツを着た男性が大きく頭を下げてます。無数のフラッシュが彼に浴びせられます。それを見た日向隊員は疑問がいっぱい。で、隊長に質問しました。

「これは?」

「見りゃわかるだろ。謝罪会見だよ。県議会議員を辞めるらしい」

「ええ!?」

「娘が恐喝事件に関与してたんだ。これじゃ公職はむりだろ。辞めて当然じゃないか?」

 これを聞いて日向隊員の脳裏にぽっと1つの顔が浮かび上がりました。日向隊員の亡くなった父親です。

 日向隊員の父親は国の要職に就いていた高級官僚でした。なのに日向隊員、当時の金目ひなたが起こしたイジメ自殺事件のせいで大非難を浴び、自分の家にもいられなくなり、夜逃げをしました。生徒会長の父親は自分の父親と同じ境遇なのです。

 けど、生徒会長の行為は絶対許されるべきものではありません。日向隊員は心の中でへらへらと嘲笑しました。

 隊長。

「ところで、明石悠の方はどういう状況なんだ?」

「あ、はい。明日学校の門の前で歌うことにしました」

「ほー、またずいぶん大胆なところで歌うんだな?」

「ええ、恐喝事件が露見したことで、返って学校にいづらくなったと思うんですよ。彼女を復権させることを考えたら、みんなの前で歌を歌うのが一番かなあって思って」

「ふふ、そっか」

 隊長は薄っすらと笑いました。何かアイデアが浮かんだようです。隊長はさらに、

「他に気になるようなことはなかったか?」

 と質問。日向隊員は思い出しました。

「そう言えば、ここを見てママと言ってましたよ、彼女」

「ここって?・・・ このテレストリアルガード基地のことか?」

「はい」

「う~ん、あいつの母親、ここで働いてるのか?・・・」

 隊長は明石悠を思い出し、次に明石悠の父親を思い出しました。彼女の肌は黒かった。けど、父親の肌の色は典型的な日本人の肌色だった。てことは、母親は外国人?

 隊長は思いめぐらせました。作戦部門にはそのような外国人女性はいなかったはず。ということは、その女性はやはり地下で働いてる保守点検部門の隊員?

 しかし、テレストリアルガードの隊員はその性質上、全員日本人でなくてはいけません(女神隊員は例外)。保守点検部門はそのルールを破って外国人を雇ってるていうことなのでしょうか?

 ちなみに、基地で働いてる一般職員も作戦部門の隊員とみなされてます。隊長は隊長なんだから全員の名前を知ってないといけないのですが、それは少々不可能。でも、ここで働いてる人は全員日本人のはず。肌の色が黒い人は、1人もいなかったはず・・・

 隊長は明石悠を思い出し、

「あのの母親はいったいだれなんだ? もしかしてこの基地にいる母親は、育ての母なのか、日本人の?・・・」

 と、隊長はここで何かを思い出しました。

「おおっと、大事なこと言うの、忘れてた!」

 隊長は横目で奥にいる宮山隊員を見ました。彼女はこちらに注目してないようです。

「ふふ、あいつ、気にしてないな、こっちを」

 が、実際は注目してました。こっそりと傾聴してるのです。

 隊長の声はここで突然小さくなりました。

「お前の正夢は相変わらず精度がいいなあ」

 日向隊員は顔を赤らめ、

「あは、そうですか?」

 日向隊員の声も小さくなってました。

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