私の居場所 36
2人が居室に入ってきました。明石悠は部屋を見回し、
「ここが日向さんの部屋?」
と質問。それに対し日向隊員は、
「うん」
と素っ気なく応えました。いやいや、正確にはここも日向隊員の部屋ではありません。もし日向隊員がこの家に住んでるとしたら、日向隊員の部屋はこんな感じになるんじゃないかと、日向隊員立ち合いの元、テレストリアルガードがセッティングした部屋です。
日向隊員は机のイスに座りました。机の上にはディスクトップパソコンがあります。日向隊員はそのパソコンのメインスイッチを入れました。
「ちょっと待ってて」
明石悠はその行為に疑問が浮かびました。で、質問。
「何してるんですか?」
「インターネットで調べんの」
「ええ、何を?」
「マリーゴールド。あなた、さっき話してたじゃん。あいみょんのマリーゴールドなら知ってるって。歌ってもらうわよ、マリーゴールド」
「ええ?・・・」
ディスプレイの画面は検索エンジン。日向隊員は検索窓に「あいみょん マリーゴールド」と入力してクリック。するといくつもの項目が出てきました。
「う~ん、どんな曲かとりあえず聴いてみんかあ」
と言うと日向隊員は、動画投稿サイトをクリック。すると曲が始まりました。あいみょんがアコースティックギター弾き語りで歌うマリーゴールドです。
「へ~ ストロークで弾くんだ」
日向隊員は今度は「マリーゴールド コード」で検索。明石悠はそれを興味深く見てます。
日向隊員はギタースタンドに掛けておいたアコースティックギターを手にし、画面を見ながらギターを弾き始めました。
ジャーン! 見事なストローク。そして・・・ 歌い始めました。その瞬間部屋の空気が変わりました。明石悠はふわぁ~と簡単な声をあげました。
日向隊員は横目でその明石悠を見ました。それで半分はいい気分になってます。が、半分は憂鬱な気分になってました。
日向隊員は黒部すみれをいつも意識してます。彼女のものすごい歌唱力。腹の底から飛び出てくる魂の叫び。日向隊員はあのヴォーカルに憧れました。けど、日向隊員の歌唱力じゃ到底及びません。そこで明石悠を歌わすことを考えたのです。はたして明石悠はどんな歌唱力を見せてくれるのでしょうか?
ジャーン。日向隊員は最後の音を引き終えました。そして明石悠を見て、
「どう?」
「す、すごいよ! なんでこんなにすぐに弾けるの? 昔からギター習ってたの?」
「う~ん、2ケ月とちょっとかな? ギター覚えて」
「ええ、それだけで弾けちゃうの?」
「ふふ、私は5歳のときからピアノ習ってたからね」
「で、でも、ピアノとギターって、ぜんぜん違う気がするんだけど?」
「ふふ、楽器には変わりないって」
「あ、わかった。あなた、メガヒューマノイドだから、簡単に弾けるんだ」
「バ、バカ言わないでよ! メガヒューマノイドだからって音楽センスがなくっちゃ、ギターは弾けないって!」
ま、Fのコードに関してはメガヒューマノイドだったからこそいきなり弾くことができました。明石悠の指摘はあながち間違ってはないようです。
日向隊員の発言が続きます。
「もう、次はあなたが歌うんだからね!」
「ええ・・・」
日向隊員はギターを構え、
「じゃあ、行くよ!」
明石悠は慌てます。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
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