私の居場所 30

 このようにして尋問から浮かび上がった恐喝を行ってた生徒は、3年生で半数以上。2年生では3割近くはいました。


 事件はさらに驚く方向へ発展しました。夕方のテレビのニュースに4人の男と2人の女が映りました。6人とも成人。実は6人はくだんの中学校の教師たち。生徒たちへの尋問で新たに浮かび上がった、明石悠の恐喝に関与してた教師たちなのです。

 この映像を見て香川隊長はびっくり。

「ええ、こいつら?・・・」

 くだんの中学校は故海老名隊員も通ってました。1年前のことです。海老名隊員はテレストリアルガードといつでも連絡できるよう、何人かの教師に海老名隊員の素性を明かしてました。ま、さすがにメガヒューマノイドてところまでは伝えてはいませんでしたが。

 実は今テレビに恐喝犯として映った6人の中に、その教師が混じってたのです。しかも2人。

「むむ・・・」

 さっきまで歓喜だった隊長は、一転頭を抱えました。やつら、取調室でテレストリアルガードのことしゃべらないだろうなあ?

 これを横目で見てた宮山隊員は思いました。

「隊長、感情の起伏、激しすぎ・・・」

 なお、彼らの取り調べは公安7課が受け持つこととなりました。どうやら情報流出は免れるようです。


 話を午前中に戻しましょう。

 尋問を受けてないくだんの中学校の1年生ですが、実は彼らは明石悠が恐喝されてることを知ってました。小学校でも明石悠の噂は広がってたのです。しかし、今日は通学2日目。事件のことはよく知らないんじゃないかとの判断で、早々の帰宅命令となりました。

 パトカーが整然と並んだ校庭グランドの脇を歩く1年生2人。パトカーの反対側には3棟の校舎が見えます。この2人の1年男子生徒。仮にAとBとしましょう。

 こぼすA。

「くそーっ、あいつのせいで学校がめちゃくちゃだよ・・・」

 Bが返します。

「明石悠だっけ? まったく1億円ポンと出せる財力があるんなら、残り2年間ずーっと金を貢ぎ続ければいいものを、さ・・・」

「この学校、この先どーなっちまうんだ?・・・」

 と、2人の眼の前、校舎と校舎の間から1つの人影が現れました。それを見て2人はびっくり。

「あ、あいつ?・・・」

 高身長。腰まで延びた長い髪。褐色の肌。そう、その人影は明石悠だったのです。唖然とするAとB。

「明石悠!?・・・」

 明石悠は90度ターン。2人と同じ進行方向へと歩き始めました。

 明石悠も警察の尋問を受けてました。もう隠す必要はありません。誰に、いつ、いくら恐喝されてたのか、すべてを吐露したようです。

 明石悠は1人だけで尋問は受けていたのですぐに終わり、今帰路についたところでした。

 AとBは突然の明石悠の出現にしばらく茫然としましたが、そのうちAによからぬ感情が湧いてきました。

「オレ、あいつ、ぶん殴る!」

 それを聞いてBはびっくり。

「ええ?・・・」

 Bは横目でパトカーを見て、

「おい、やめとけよ! 今お巡りさんがいっぱいいるんだぞ、ここには!」

「知るか!」

 Aは少し速いスピードで歩き出しました。怒りを表現してるようなスライド。Bはそれを見て、

「あ~あ・・・」

 と、一番奥にある校舎のさらに向こう側から別の人影が現れ、明石悠へと向かいました。Bはそれを見て、はっとしました。

「あ、あいつ?・・・

 やばい!・・・」

 と言うや否や、BはAへと走り出しました。

「おーい、ちょっと待てよーっ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る