私の居場所 29

 これを聞いてクラス中のみんながしゅんとしてしまいました。警官は側まで来てた出席番号2番の女子生徒を見て、

「じゃ、行こっか」

 警官と女子生徒は、開け放たれた引き戸から廊下に出て行きました。


 廊下に出た警官と女子生徒。廊下には2人の警官が立ってました。今出てきた警官は、この2人に敬礼。なお、すべての教室の引き戸の前には、警官が2人立ってました。教室をロックし続けるするためです。

 くだんの警官は女子生徒を引き連れ、廊下を歩き、別室の引き戸に手を掛け、部屋の中に入りました。

 この部屋の隅にはピアノが見えます。壁には昔のヨーロッパの音楽家の肖像画が。そう、ここは音楽室。

 本当だったら生徒指導の部屋で行われないといけない尋問ですが、2年、3年の全クラスでこの尋問は行われてました。どう考えたって部屋は1つだけでは足りません。とりあえず使える教室はすべて使おうという作戦です。

 音楽室の中央には1つの机が置いてあり、1人の私服警官がイスに座って待ってました。その背後では、1人の制服女性警官が机に座ってます。机の上には紙と筆記道具とスタンドが。どうやら彼女は記録係りのようです。

 私服警官は女子生徒を見て、

「さあ、座って!」

 女子生徒は応えます。

「はい」

 女子生徒は机に警官と相対して座りました。なお、机の上にはかなり大きい時計が立て掛けてあります。時計は90度脇の方に向いてます。その先にはムービーカメラがありました。どうやら尋問の様子を影像に残すようです。

 警官の質問が始まりました。

「では、質問します。あなたは明石悠を恐喝したことがありますか?」

 女子生徒はしどろもどろに応えます。

「わ、わ、私は・・・ 私は何も知りませんでした」

「じゃ、明石悠という女子生徒のことは?」

「そ、その人のことなら知ってますよ」

「ほ~・・・ あなたは3年生ですよね。明石悠は2年生。学年が違うとふつーは知らないと思いますが?」

「それは・・・ いろいろとあったみたいですから、彼女は・・・」

「どうやら明石悠が恐喝されてたことは知ってたみたいですね」

 女子生徒はビクッと反応しました。そして仕方がないという感じで返答。

「はい・・・」

「誰が恐喝してたのか、知ってますか?」

 女子生徒は応えることができません。脇を見てもじもじしてるだけ。警官はピーンときました。そして言葉を続けます。

「もしかしてあなたも恐喝してた?」

 それを聞いた途端、女子生徒は激しく反応。

「し、してませんよ!」

「ほ~ じゃ、誰が恐喝を?」

 女子生徒は再び煮え切れない態度。

「それは・・・」

「あなたが知ってる限りでいいですよ。さあ、名前を!」

 すると女子生徒は、4人の女子生徒の名前を漏らしました。ちなみに、この4人、この女子生徒の遊び仲間です。もちろん同じクラス。これを聞いて警官はニヤッとしました。

「わかりました。このまま帰宅していいですよ」


 尋問はこのまま出席番号順に続きました。前述の4人の女子生徒も尋問を受けました。4人とも4人の名前をあげました。そう、最初に尋問を受けた女子生徒の名前も、4人の口から出たのです。

 実はこの5人は、明石悠を恐喝したことがあったのです。恐喝は2回だけでしたが、計10万円恐喝してました。これは完全な犯罪です。彼女たちは補導となりました。

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