私の居場所 26

 そのうち不良グループは明石悠の肉体にも手を出すようになりましたが、生徒会はそれすら許しました。不良グループは1つに3~7人。それが1日3グループ。13歳の明石悠は毎日毎日そいつらを相手にしないといけなくなったのです。

 現在の生徒会長は不良グループの順番を管理してるとき、毎回毎回自責の念にかられてました。現在の生徒会長の父親は県議会議員。これがバレたら、間違いなしに父親に迷惑がかかります。なんか自責の念の方向性が間違ってるような・・・

 けど、彼女以外の生徒会員はすぐに喜んで仕事するようになりました。実はすべての不良グループがそうではなかったのですが、明石悠から恐喝した金の何%かを生徒会に上納してたのです。その金はすべての生徒会員に均等に分け与えられました。

 ちなみに、教師の何人かも恐喝を知ってました。彼らのポケットにも生徒会から上納金が入っていました。

 だいたい明石悠が毎日恐喝されてることを最初に知ったのは教師。それを当時の生徒会長に管理するように命じたのも、別の教師でした。

 最初のうちは疑問と自責がいっぱいだった現在の生徒会長も、いつの間にやら感覚がマヒしてました。喜んで上納金を受け取るようになったのです。

 そのうち3月となり、3年生だった当時の生徒会長は引退。代わりに県議会議員の娘という理由で、現生徒会長が生徒会長となりました。


 そして今、くやしさいっぱいの生徒会長の顔。両眼から大量の涙があふれ出ています。けど、もうどうにもなりません。憎むべきは日向隊員? いや、そうじゃないでしょ!?


 さて、中学校に捜索に入った警察ですが、まずはこの時点で明石悠を恐喝してたことが判明してる不良生徒を一斉に逮捕、補導しました。

 校舎に設置された両開きドアに横付けされた警察用のバス。校舎からバスへと移される不良生徒たち。扉は90度開いていて校舎とバスの隙間を埋めてますが、それでも移動中の不良生徒たちが垣間見えます。中には怒号をあげてる生徒もいます。

「離せよ、こんにゃろー!」

「なんだよーっ! 生徒会や先生せんこーがやっていいって言うからやっただけのことじゃねーかよ!」

 これを中学校の校庭グランドと道路との間に設置されたフェンス越しに捉えてるマスコミのカメラたち。その中にはマスコミではないカメラマンの姿もあります。そう、ユーチューバー。

 その中の2人。1人はカメラを、もう1人は小銃のような器具を構えてます。これは超指向性マイク。

 マイクを持ってる男はぶ厚いヘッドホンをしてるのですが、そのヘッドホンから蝶指向性マイクが拾った音声が漏れてきました。

「逮捕すんなら、まず生徒会からだろーよーっ!」


 ここはかなり汚いだらしのない部屋。中年にさしかかった男がインターネットをしています。小太り、メガネ、アニメのトレーナー。典型的なヲタクのよう。

 ディスプレイには動画投稿サイト。先ほどのユーチューバーが捉えた影像が映ってます。その音声。

「逮捕すんなら、まず生徒会からだろーよーっ!」

 どうやらくだんのユーチューバーは、生配信を行ってるようです。

 この影像を見ている男はぽつり。

「おいおいおい、事件の中心は生徒会かよ・・・」

 どうやら事件の首謀者は生徒会と思われてしまったようです。ま、ある意味正解なのですが。

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