私の居場所 17
続けて錦弁護士の説明。
「娘さんを恐喝してたグループは1つだけではなかったようなんですよ。20前後はあったようなんです。中には高校の不良グループや、半グレのグループもあったようなんです」
隊長はもう言葉を発することもできません。なんという暴力学校。えびちゃん(故海老名隊員)も通った中学校だろ。えびちゃんの時代からこうだったのか?
と、そこにウェイトレスがやって来ました。
「お待たせしました」
と言うと、ウェイトレスはテーブルにコーヒーとチョコレートパフェを置きました。
ウェイトレスは立ち去りました。隊長は心を落ち着かせるためか、ブラックなのにコーヒーをスプーンでクルクルと廻しました。そしてコーヒーに軽く口をつけ、明石さんを見ました。
「あなた、2億も抜かれたというのに、本当に気づかなかったんですか?」
「ええ・・・」
「あなた、いったい何者?」
ここで錦弁護士が口を挟みました。
「実は彼はテレストリアルガードの隊員なのです」
思わぬ応え。隊長は反射的に質問。
「ええ、どこの部署?」
錦弁護士。
「それは言えません。理由は言わなくてもわかりますよね」
テレストリアルガードは基本隊員の名前を公表してません。例え仲間内であっても。けど、隊長はピーンときました。
テレストリアルガード基地のそばの学校に娘が通ってる。てことは、この人は作戦部門か保守点検部門の人。作戦部門の隊員なら隊長はほとんど把握してます。ちなみに、基地で働く一般職員はすべて作戦部門の隊員とみなされてます。
一方保守点検部門の隊員は、工場長と言われてる高齢女性以外、まったく知りません。全員地下の整備場に勤めていて、地上の作戦部門の隊員と接点を持たないようにしてるからです。
保守点検部門の隊員は、宇宙傭兵部隊ヴィーヴルからもたらされた科学技術に精通してます。それはよからぬ国から見たら喉から手が出るほどの頭脳。だから身内からも秘密にされてるのです。
どうやら明石さんは保守点検部門の隊員のようです。保守点検部門の隊員は作戦部門の隊員より数段給料が高いようです。金に無頓着になるもの当然か?
しかし、これで1つ疑問が解決しました。今このテーブルに座ってる4人は、4人ともテレストリアルガードの関係者。だから会議冒頭錦弁護士が、
「私はテレストリアルガード専属の弁護士、錦耕太郎です」
と言ったのです。みんなテレストリアルガードの関係者だから、テレストリアルガードの関係者であることを秘密にしておく必要がなかったのです。返ってテレストリアルガード関係者であることを打ち明けておいた方が、話がしやすかったのかもしれません。
錦弁護士は明石隊員を見て、
「明日どうします? やはり娘さんを休ませますか?」
明石隊員は無言。錦弁護士は話を続けます。
「こんなことがあった翌日です。絶対ほかの恐喝グループから制裁されますよ」
チョコレートパフェを頬張ってる日向隊員がぱっと顔をあげました。
「あ、私がなんとかしますよ」
隊長。
「ふふ、そいつは心強いな」
明石隊員は日向隊員を見ました。
「しかし、君はいったい何者なんだ? あの3人をあっという間に病院送りにしてしまうなんて・・・」
隊長。
「それは言えません」
その返答に明石隊員はびっくり。
「え?」
隊長はニヤッとして、
「理由は言わなくてもわかりますよね」
明石隊員は苦笑しました。
「あは・・・」
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