私の居場所 16

 隊長と日向隊員が近づくと、その内の1人がさっと立ち上がり、それに気づいたもう1人も、はっとして立ち上がりした。先に立ちあがった男性が手を伸ばしました。

「どうも」

 隊長はその男性と握手します。

「ああ、どうも」

 もう1人の男性も手を伸ばし、隊長と握手。

「よろしくお願いします」

 3人と日向隊員はテーブルの席に座りました。最初に立ちあがった男性の自己紹介。

「私はテレストリアルガード所属の弁護士、錦耕太郎です」

 隊長はその発言に1つ疑問が浮かび上がりました。テレストリアルガード所属の弁護士が「テレストリアルガード所属の弁護士です」と言うはずがないからです。

 テレストリアルガードに関係してる人は、作戦部門以外テレストリアルガードの関係者という身分を隠さなくてはいけません。この弁護士、なんでテレストリアルガードという言葉を口にしたんだ?

 錦弁護士はもう1人のスーツの男性を見て、

「この人は明石さん」

 明石、それは隊長が事前に聞かされていた固有名詞。隊長は応えます。

「あなたが今回の被害者の父ですね」

「はい」

 それを聞いて日向隊員は驚きました。今回被害を受けていた女子生徒は、どこからどう見ても日本人ではありません。なのにこの人物は典型的な日本人。この明石て人、いったい何者? ほんとうにあの女の子のパパなの?

 今度は隊長の自己紹介。

「私は香川です」

 隊長は横眼で隣に座った日向隊員を見て、

「このは日向愛」

 日向隊員のあいさつ。

「日向です。よろしくお願いします」

 ここでウェイトレスが来ました。

「いらっしゃいませ! ご注文はお決まりですか?」

 隊長はウエイトレスを見て、

「あ、コーヒーで」

 次に隣りに座った日向隊員を見て、

「お前は?」

 突然振られたもので、日向隊員は慌てます。

「え?」

「なんでもいいよ」

「じゃ、チョコレートパフェ」

 隊長はそのオーダーが予測の範疇になかったらしく、思わず苦笑しました。

「あは、そっか」

 隊長はウェイトレスを見て、

「このにチョコレートパフェを」

「わかりました」

 ウェイトレスが立ち去りました。錦弁護士が口を開きます。

「では、本題に入りましょう」

 隊長は明石さんを見て、

「うん・・・ 言いにくいことてすが、あなたの娘さんは・・・」

「ええ、娘から直接聞きました」

 錦弁護士。

「私も同席して聞きました。恐喝は去年夏休み明けから始まったそうです。身体の方は3ヶ月前から」

 日向隊員は唖然。

「ええ~・・・」

 隊長は呆れ顔で思いました。

「おいおいおい、3ケ月もられっぱなしだったのか?」

 隊長は今度は声を発し、明石さんに強めに質問しました。

「あなた、ぜんぜん気づかなかったんですか?」

「すみません。仕事が忙しくって・・・」

「しかしねぇ、まだ13歳でしょ。それを・・・ くっ、こんなバカなこと、あっていいのか?・・・」

 明石さんは無言。隊長の怒りの発言が続きます。

「お金の方だって・・・ いったいいくら恐喝されたんですか?」

 明石さんは今度は口を開きました。

「実はこの話を聞いて何通か通帳を確認したのですが、8千万円が消えてました」

「ええ、8千万も?・・・」

 隊長は口をあんぐり。明石さんは言葉を続けます。

「それ以外にも行方不明になってる通帳がいくつかあります。最終的には1億・・・ いや、2億消えてるかもしれません」

 ええ、2億って・・・ 日向隊員も口をぽかーんと開けたままになってしまいました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る