侵略者を撃つな! 120

 片岡愛美は山際怜子いじめ自殺事件が露見した直後にテレビに出て、そのすべての責任を金目ひなたに押し付けました。金目ひなた=日向隊員にとって絶体に許せない人物の1人なのです。

 片岡愛美の背後にもう1人少女がいます。ストレートヘアの長髪、黒っぽいキャップを目深まぶかに被ってます。実はこの少女は日向隊員です。日向隊員は片岡愛美を尾行してました。

 日向隊員はつぶやきます。

「なんだよ、こんな時間まで塾通いかよ。私立の中学にでも行くつもりなの? くっ、こっちは死ぬ寸前まで追い詰められたというのに、いい身分じゃん。

 あなたのせいで弟は死んだ。お父さんとお母さんも死んだ。私は身体がバラバラになった。許せない、絶対許せない!」

 2人が鳥居の脇を通りました。日向隊員は神社の境内の方を見て、

「ふっ」

 日向隊員はその鳥居をくぐりました。境内の脇にはいくつもの巨木があります。日向隊員はその1本の陰に隠れ、腰を下ろしました。

 日向隊員は両手で自身の頭を挟み込むように持ちました。そのまま少し頭を捻ると、カチッという音が。日向隊員の首が胴体から離れました。日向隊員の顔がニヤッと笑いました。


 片岡愛美は道の暗い部分にさしかかりました。片側は公園。反対側は大きな建物。この建物、倉庫のようです。出入り口は反対側の道路。片岡愛美がいる側は一面の壁。窓やドアはいっさいありません。

 これを上空から見てる何かがあります。その何かからの視点。片岡愛美の周りには人はいません。彼女1人です。視点が片岡愛美めがけ、すーっと下がってきました。

 ふと片岡愛美の眼の前に何かが通り過ぎました。はっとする片岡愛美。

「え?」

 片岡愛美は両手でそれぞれの耳のイヤホンを取り、

「何、今の?」

「まなちゃん」

 その突然の声に、片岡愛美ははっとしました。

「こ、この声は金目ひなた? そんなバカな! あいつ、飛行機事故で死んだはず?・・・ だ、誰なのよ、いったい?」

「ここよ」

 片岡愛美はキョロキョロします。

「どこ? どこにいるの?」

「ここだって」

 片岡愛美はちょっと視線をあげました。そこには長髪の生首が。金目ひなたの生首が空中に浮いてるのです。

「あなた、よくも私を売ったわね」

「うぎゃーっ!」

 片岡愛美はあらん限りの大声をあげ、振り返りました。が、その眼の前にひなたの生首がすーっと移動して来ました。生首は不気味な笑顔を浮かべ、

「どこに行く気?」

「やめてーっ!」

 片岡愛美は両耳をふさいでうずくまりました。ひなたの生首はその片岡愛美の耳元に近づき、

「私の身体は飛行機事故で細切れになっちゃったけど、見ての通り、首から上は無傷だったの。ふふ、一生あなたに憑りついてやるわ!」

 それに対して片岡愛美はただ叫ぶだけ。

「やめてーっ! やめてーっ! お願ーいっ! 許してーっ!」

 と、片岡愛美の股間から液体があふれてきました。おもらしをしてしまったのです。それを見てひなたは思わず吹き出しそうになりましたが、なんとか堪えました。

「また来るわよ」

 と言うと、ひなたの生首は真上にふわーっと舞い上がって行きました。


 空中を散歩してる首だけの日向隊員。現在はどこに監視カメラがあるのかわかりません。こんな姿を見られたら大変。日向隊員はそれを意識してか、家の屋根に隠れるように飛んでました。

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