侵略者を撃つな! 121(終了)

 日向隊員の顔を見ると、とっても上機嫌。

「あはは、愉快愉快!」

 と、突然日向隊員の顔がキッときつくなりました。

「飯島莉桜りお、広川雫。それに真田希望のぞみ。こいつらにも仕返ししないと! こいつらのせいで私は天涯孤独になったんだ! この恨み、絶対晴らしてやる!」

 と、日向隊員の長髪のウィッグがスル~と脱げました。日向隊員はちょっと行き過ぎたところでそれに気づき、空中で停止しました。

「え?」

 日向隊員が振り返ると、ウィッグは樹の枝に引っかかってました。

「あー、もう!」

 日向隊員はウィッグを取ろうとします。と言っても、今の日向隊員に手はありません。ウィッグを口にくわえ、引っ張ります。が、なかなか取れません。

「あれ、取れない・・・」

 日向隊員はウィッグを何度も何度も引っ張ります。そのたびに樹の枝が揺れます。路上を歩いてたOLらしき女性がそれに気づき、はっとしました。

「ん?」

 日向隊員はなんとかウィッグを取ることができました。日向隊員はウィッグを口にくわえ、

「ふ~ 取れた~!」

 と、ここで日向隊員の耳に謎の声が。

「あ、あわわわわ・・・」

「ん、なに?」

 日向隊員は振り返ると、先ほどのOLらしき女性が。女性の顔は青ざめてます。当たり前です。今日向隊員は生首そのもの。そんなものが宙に浮いてたら、誰だって青ざめます。

 日向隊員は照れ笑い。

「あはは、どうも・・・」

 女性はついに悲鳴を上げました。

「うぎゃーっ!」

 すると近くを歩いてた中年の会社員らしき男性が駆け寄ってきました。

「どうしました!?」

 女性は、

「あわわ・・・」

 と、言葉にならない言葉をあげてます。

「しっかりしてください! いったい何があったんですか!?」

 女性は上空を指さしました。

「え?」

 男性がその方向を見ると、ウィッグをくわえた日向隊員の首が飛び去るところでした。男性も腰を抜かし、悲鳴をあげました。

「うぎゃーっ!」


 翌朝ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。隊長がイスに座って新聞を読んでます。東〇スポーツのようです。1面の見出しは「東京に生首現る!」

 隊長はちょっと視線をずらしました。そこに日向隊員が立ってました。日向隊員は小さくなってます。まるで懲罰で立たされてるよう。まあ、まさにその通りなのですが。

 隊長はふーっと息を吐き出し、今見てた新聞を卵型のテーブルにぽんと投げ出しました。

「やっぱ首と胴体をちゃんとつなげないといけないようだな」

 日向隊員は何か言い返そうとしますが、どう考えてもこれは100%日向隊員の責任。言い訳はできません。

 隊長は固定電話の受話器を取りました。

「あ、もしもし・・・ こちら、作戦部門です。技術開発部門メガヒューマノイドセクションに通してもらいたいのですが・・・」

 それを聞いてる日向隊員は泣きだしそう。と、隊長の顔色が突然変わりました。

「え?」

 隊長はしばらく向こう側の話を聞いて、一言。

「わかりました・・・」

 隊長は残念て顔で受話器を元に戻しました。そして日向隊員を見て、

「残念だか、首はそのままだ。何か考えがあるようだな、あちらさんは。何を考えてるんだか?」

 それを聞いて日向隊員の顔がぱっと明るくなりました。が、隊長の発言が続きます。

「でもなあ、こんな事件を起こされちゃ、こっちは困るんだよ」

 隊長はちょっと考え、

「そうだ。これからは首をはずしたらブザーが鳴るようにしよう! この部屋いっぱいに鳴り響くようなブザーを!」

 それを聞いて日向隊員は残念そう。

「え~・・・」

「何か文句あんのか?」

「い、いいえ・・・」

 日向隊員は再び残念そうな顔をしました。

 こうして日向隊員の復讐は、あっけなく終了しました。

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